嫌気性一酸化炭素資化性好熱菌は一酸化炭素(CO)を除去する重要な役割をもつと考えられているが、その環境中における存在量は分かっていない。本研究では嫌気性CO資化性好熱菌の生態を解明するために、モデル生物であるCarboxydothermus属細菌を対象とした生態学的研究を行った。当研究員が前年度確立したリアルタイムPCR法を用いて環境試料中のCarboxydothemrus属細菌を定量した。堆積物中におけるCarboxydothermus属細菌の分布と、それに影響を与えると考えられる環境要因(温度、溶存有機体炭素量など)との関係を調べた。鹿児島県指宿市の鰻温泉の温度の異なる3地点と同市山川の沿岸熱水環境、およびリファレンスサイトとして同市鰻池(淡水湖)から堆積物を採取した。温度は採取時に現場で測定した。pH、TOC(溶存有機体炭素量)、TN(溶存窒素量)の測定には、試料から得られた間隙水を用いた。土壌水分含有量については、堆積物試料の湿潤重量と絶乾重量の差から値を算出した。さらに、試料を密閉容器に入れ、COを封入した条件下で培養し、経時的にCO濃度を測定することで試料中の潜在的微生物CO消費活性を測定した。 その結果、全ての堆積物試料からCarboxydothermus属細菌を試料1gあたり1000-100000細胞相当を検出できた。Carboxydothermus属細菌は温泉以外にも沿岸熱水環境や淡水湖の堆積物など多様な環境に広く分布していることが強く示唆された。本研究で測定した環境要因および潜在的微生物CO消費活性とCarboxrdothermus属細菌数の間に明確な相関性は見られなかった。嫌気性CO資化性菌の分布に影響する環境要因を調べた報告はこれまでになく、Carboxydothermus属細菌の存在量や分布に影響する環境因子が他に存在すると考えられた。
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