研究概要 |
本年度では, 磁束変調型磁気ギアのポールピースに着目し, 磁気ギアの高効率化を図った。また, 磁気ギアと永久磁石同期回転機を一体化させた磁束変調型二軸モータを提案した。 これまで先行研究において, 磁気ギアの回転子形状や, 低損失化, 設計変数等に関する検討が進められているが, 磁気ギアの最適設計に関する検討は未だ不十分である。特に, 磁石磁束の変調を担うポールピースが特性に及ぼす影響については, 詳細な検討が必要である。本研究では, 有限要素解析を用いて, ポールピースが低速側回転子に近づくほどトルクが増加することを明らかにした。得られた知見に基づき, ポールピースを改良した磁気ギアを試作したところ, 最大トルクが約45%向上し, 最大効率が約99%に達したため, 本研究目的の一つである超高効率磁気ギアの開発を達成したと言える。 次いで, 永久磁石モータと磁束変調型磁気ギアを磁気的に組み合わせた磁束変調型二軸モータを提案した。本モータは, 固定子, 磁石回転子, 変調子の3つの要素から構成される。これまでに論文および特許等で提案された磁束変調型二軸モータは, 永久磁石モータと磁束変調型磁気ギアを機械的に組み合わせた構成である。本研究で提案する磁束変調型二軸モータは, 磁石回転子と変調子の位置を入れ替えた構造をとり, 従来型で問題となっていた変調子磁極片の保持を容易にした。有限要素解析を用いて, 従来の磁束変調型二軸モータ(Type1)と提案する磁束変調型二軸モータ(Type2)の最適設計を行い, 比較・検討を行った。最適化後の変調子の平均トルクは, Type2の方がType1よりも約5%大きくなった。また, 磁石使用量を比較すると, Type2の方がType1よも約20%少ない。すなわち, Type2はより少ない磁石量で同等以上のトルクを達成していることから, 提案する磁束変調型二軸モータの優位性を明らかにした。また, 提案する磁束変調型二軸モータのトルク密度は71N・m/Lを達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁束変調型磁気ギアのポールピースについて詳細な検討を行うことで, 試作磁気ギアの最大効率が約99%に達し, 本研究目的の一つである超高効率磁気ギアの開発を達成した。また, 風力発電への応用に向け, 永久磁石モータと磁束変調型磁気ギアを磁気的に組み合わせた磁束変調型二軸モータを提案し, 検討を行った。提案した二軸モータに対し解析だけでなく, 実機検証を行ったことから, 本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度では提案した磁束変調型二軸モータに対し, 有限要素解析および実機試験の両者から検討を行ったが, 実験的検証は基礎特性に限られていた。今後, 磁石減磁や効率について詳細な実験的検証を行い, 解析との比較・検討が必要である。また, 提案した磁束変調型二軸モータのモータとしての特性だけでなく, 発電機としての特性について検討を行い, 磁束変調型発電機と, 従来のギアード発電機および多極発電機などと比較・検討を行う。 得られた検討結果を用いて, 磁束変調型磁気ギアと永久磁石発電機を磁気的に組み合わせた磁束変調型発電機の開発を行い, 現有の小型風車に実装し, 特性試験を行う。
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