研究課題/領域番号 |
12J04462
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
飯塚 遼 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ルーラル・ジェントリフィケーション / サービス・クラス / ワーキング・クラス / ルーラル・アイドル / 追い出し / 改装・改築 |
研究概要 |
本年度の研究内容は、イングランド中央部ダービーシャー・デールスにおいて、ルーラル・ジェントリフィケーションのプロセスとその地域への影響の把握を行った。具体的には、Office for National StatisticsによるCensus for England and Walesをもとに、人口動態や社会階級構成に関する指標について時系列変化を追い、それらについて定量的な分析を行った。また、ジェントリフィケーションの概念の重要な要素としての家屋の改装や改築については、ピーク・ディストリクト国立公園への許可申請状況をもとに考察を行った。その結果、ダービーシャー・デールスでは、シェフィールドの郊外に位置する東部やダービーの郊外にあたる南部において1990年代よりジェントリフィケーションの傾向が顕著であったことが明らかになった。そのようなルーラル・ジェントリフィケーションの分布傾向となった背景には、都市への近接性とマーケット・タウンとしての商業や行政の中心地機能の有無が大きく関連していた。一方、西部においてはルーラル・ジェントリフィケーションの傾向が弱かったものの、2000年代より傾向が強まり始めていることも明らかになった。それは、サービス・クラスの農村に対する志向の重点が、商業や行政サービスへの近接性から農村の環境やルーラリティに移行してきており、よりマーケット・タウンから離れた小規模の農村が好まれるようになったことを示していた。ダービーシャー・デールスにおけるルーラル・ジェントリフィケーションは、都市との近接性やサービス・クラスのルーラル・アイドルを背景として空間的な広がりをもって展開しており、このようなルーラル・ジェントリフィケーションの展開は、都市と同水準のモノやサービスを農村にもたらす構造となっていることが明らかになった。その一方で、旧来のワーキング・クラスが物価や不動産価格の高騰により生活しにくくなるという問題も孕んでいるといった現状もみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって、イギリスの研究対象農村におけるジェントリフィケーションの現状が明らかになった。このことにより、次年度に予定している景観の上部構造、下部構造、あるいは意識構造の関係性についての本格的な調査の基盤を築くことができ、さらなる研究の進展が十分期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の研究計画としては、イギリスの研究対象農村における調査を進行させ、景観の上部構造の把握のほか、Q-methodologyを用いた住民へのアンケートにより意識構造も解明していく。その成果は、8月に京都で開催される国際地理学連合の会議で報告する予定である。また、夏以降、日本の研究対象農村についても、イギリスで行った研究プロセスをもとに本格的な調査を行う。さらに、それらと並行してこれまでの研究成果をまとめた論文を複数の学術誌に投稿することも予定している。
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