本年度は、前年度にひきつづき、ルーラル・ジェントリフィケーション飽和地域としてのグリンドルフォード村において、国勢調査小地域データと住民の農村に対する意識や生活スタイルについての詳細なアンケート調査、および聞き取り調査のデータについて多変量解析を行い、農村コミュニティにおけるジェントリフィケーションの影響をソーシャル・キャピタルの観点から検証した。さらに前年度のユールグレイヴ村、モンヤシュ村での調査研究結果との比較も行った。結果としては、グリンドルフォード村においては、ジェントリフィケーションが1970年代より進展してきたのに対して、ユールグレイヴ村では1980年代よりジェントリフィケーションの兆候がみられ、1990年代に急速に進展したことが明らかになった。一方、モンヤシュ村では、ジェントリフィケーションが1970年代より比較的緩やかに進展していた。3つの地域それぞれのルーラル・ジェントリフィケーションの進展速度は異なっているが、住民の社会階層や住宅改築などの共通した指標の変化量と集落の歴史背景から「出現段階」、「萌芽段階」、「発展段階」、および「成熟段階」の4つの特徴的な段階が存在しており、それらに基づいたステージ・モデルが構築された。また、ルーラル・ジェントリフィケーションの地域への影響についてはジェントリフィケーションの度合いが進展するのにしたがって、ソーシャル・キャピタルの性格がコミュニティの結束を高めるボンディングに変化し、ジェントリフィケーションの発展地域に位置づけられる農村においてソーシャル・キャピタルがコミュニティにとって最もポジティヴに機能する状態となることを明らかにした。さらに、ジェントリフィケーションの飽和地域に位置づけられる農村においては、ソーシャル・キャピタルがコミュニティの外部との繋がりを重視するブリッジングの性格を帯びることも明らかになった。
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