研究概要 |
本研究は、ラドン散逸係数と土壌物性との関係およびラドン散逸係数を利用した地下水・鍾乳洞内ラドン濃度における土壌からの散逸ラドンの影響解明を目的とする。本年度は, 散逸ラドンの地下水への影響を明らかにすることを主たる目的とし, 沖縄県南部に所在する玉泉洞において滴下水中ラドン濃度の測定を行った。測定は, 平成25年5月から開始し, 約1ヶ月間隔でサンプリングを行い, 1年分のデータを取得する予定である。水中ラドン濃度の測定器は, 簡易型液体シンチレーションカウンタ(PerkinElmer社製, BetaScout)を用いた。濃度の算出には積分バイアス法を用いた。試料採取地点を選定するにあたって, 観光洞として公開されていない場所に存在する滴下速度が著しく大きいストローを選定した。玉泉洞の滴下水中ラドン濃度の算術平均値士標準偏差および範囲は, 8.6±1.4BqL^<-1>および6.9~11.4BqL^<-1>であった。7月から9月に若干高くなる傾向が認められたが, 変化の幅は小さく, 年間を通して一定量のラドンが滴下水から洞内に供給されていることが明らかとなった。滴下水中に含まれるラドンの起源を推定するために, これまでに測定された土壌中ラジウム濃度, ラドン散逢係数, 間隙率および土壌粒子密度を用いて, 土壌間隙気相中ラドン濃度を求めた。さらに土壌下部では気液平衡が成立していると仮定し, 士壌間隙水中ラドシ濃度を算出した。沖縄県南部における琉球石灰岩の透水係数と玉泉洞上の琉球石灰岩の厚さを用いて, 間隙水が琉球石灰岩中を浸透する時間を求めた。これらの値を用いて, 土壊間隙水が琉球石灰岩を浸透する時間におけるラドンの減衰を考慮した滴下水中ラドン濃度推定値を算出した。算出された滴下水中ラドン濃度推定値と測定から得られた滴下水中ラドン濃度算術平均値は概ね一致した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料採取, 実験および測定の実施など, 当初の計画にそって研究を進めており, 研究成果を国際誌へ投稿するために準備中である。これに加えて研究室が実施している関連共同研究にも参画し, 国内外の学会において成果発表を行った。これらの研究成果についても学術雑誌への投稿準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
沖縄県内で採取された土壌のラドン散逸係数の評価および土壌物性の分析を継続す多とともに, 地下水中ラドン濃度データの拡充に務める。本年度は, 散逸ラドンの地下水への影響を明らかにすること主たる目的とし, 玉泉洞内の滴下水中ラドン濃度を測定した結果, 土壌から散逸したラドンが石灰岩中・鍾乳洞吋中の地下水に影響していることが示唆された。データの取りまとめと文献調査を行い, 国内外の学会で成果発表を行い, 原著論文として学術雑誌へ投稿する。
|