研究課題/領域番号 |
12J04473
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
林 正幸 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 共生 / 行動 / アブラムシ / アリ / クサカゲロウ / 相互作用 / 防御戦略 / 化学擬態 |
研究概要 |
アリとアブラムシの相互作用は共生のモデルケースであり、アリはアブラムシから甘露を受け取る代わりにアブラムシの捕食者および寄生者を排除することが知られる。しかし、アブラムシ捕食者であるカオマダラクサカゲロウ(以下、クサカゲロウ)の幼虫は、アブラムシの死体を背面に載せることでアリからの攻撃を回避する。これは、背面のアブラムシ死体がアリに対し化学擬態・偽装の機能を持ち、アリの攻撃性を減少させ、クサカゲロウはアリの随伴するアブラムシを捕食可能となることが、これまでの研究で明らかとなった。本年度は、クサカゲロウの対アリ戦略をさらに深く調査すべく、本種の卵柄のアリに対する機能を検証した。 まず、アリ数種に、卵柄のついたクサカゲロウ卵、もしくは切り取った卵を提示し、翌日それらの生死を記録した。その結果、全てのアリ種において、卵柄のついた卵の生存率が有意に高かった。このことから、クサカゲロウの卵柄はアリに対して防御機能を持つことが示唆された。更に、アリ随伴の有無を操作したアブラムシコロニーにクサカゲロウ卵を産下させ、卵捕食者を導入し、卵の生存率を比較した。結果、アリの随伴するアブラムシコロニーではクサカゲロウ卵の生存率が有意に増加した。このことから、クサカゲロウ卵は卵柄のアリに対する防御機能により、アブラムシコロニー付近に産下された場合、間接的に随伴アリから保護されるという利益を得ることが明らかとなった。 また、クサカゲロウ幼虫の載せるアブラムシ死体のアリに対する偽装機能がどのようなメカニズムで生じているのか明らかにするため、アリのアブラムシ認識機構について調査を行った。その結果、アリはアブラムシに随伴した経験によりアブラムシに対する攻撃性を減少させた。これは、アリのアブラムシ認識に学習が関与することを示唆している。 これら研究成果の一部は、国際誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の仮説を支持する結果が得られている。現在は研究成果のうち2報を国際誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた成果の一部を学術雑誌に投稿中である。同時に、計画書に記載したとおり、アリに排除されない捕食者のアリ―アブラムシ共生系および節足動物群集におよぼす影響について検証していく。
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