研究課題/領域番号 |
12J04480
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 峻介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 高強度レーザー / 短パルス電子源 / 高強度電子源 |
研究概要 |
本研究の目的は、数10fsのパルス幅、数1000fCの電子数を持ち合わせた、世界最高の超高輝度短パルス電子源を開発することである。これを達成するため、(1)パルス圧縮により得られる電子パルス幅の超短パルス化、及び(2)レーザー照射ターゲットの最適化による電子パルスの高強度化に関する研究を行った。 (1)高強度短パルスレーザーを固体ターゲットに照射した際に発生する高速電子のパルス幅はレーザーのパルス幅と同程度であると考えられている。しかしながら、そのパルス幅は非常に短いため実験的に観測することは極めて困難であり、これまでの研究ではレーザーパルス幅の数倍以下であることが示されるのみであった。本研究では新たな測定手法を開発し、高速電子がレーザープラズマから放出される時間がレーザーのパルス幅と同程度であること1を観測した。さらに、発生する電子のパルス幅がレーザーのパルス幅によって変化することをはじめて観測した。 本結果より、電子の加速に極短パルスのレーザーを用いることで電子のパルス幅を短くすることが可能であることが期待される。そこで、これまでの研究に用いてきた150fsのレーザーパルスを30fsまで縮めるためのレーザー装置のアップグレードを行った。チャープパルス増幅のためのパルスストレッチャー及びパルスコンプレッサーの設計と製作を行い、レーザーの短パルス化に成功した。 これまでの研究結果により、高強度短パルスレーザー生成電子パルスをパルス圧縮することにより超短パルス化するためには、高強度短パルスレーザーに付随するプリパルスにより生成されるプリパルスを制御することが必要であると考えられる。プリパルスを制御するために様々な研究が行われているが、本研究ではその中でも最も性能の高いプラズマミラーを用いた抑制を行った。低反射ARコートを施した特注プラズマミラーを用い、高強度短パルスレーザーの1ピコ秒前に存在するプリパルスの強度を3桁制御することに成功した。また、プラズマミラーをレーザー装置に組み込み、定常運転を行うための装置を作成した。プラズマミラーは消耗品であり1照射毎に交換しなければならず、さらにプラズマミラーは真空中でなければ機能することができない。このためレーザーパルスに同期させてプラズマミラーを真空中で駆動し、常に新しい面でレーザーを反射しなければならない。プラズマミラーの駆動機構を備えた真空槽を製作し、高強度短パルスレーザー装置に組み込んだ。 (2)高強度短パルスレーザーを固体ターゲットに照射した際に発生する高エネルギー電子パルスの放射角度分布は、ターゲット形状により大きく異なることが報告されている。超高輝度短パルス電子源を実現するため、ターゲット形状を最適化することで電子パルスの高輝度化を行った。ターゲットとして直径10pmの極細金属ワイヤーを用いることで、ワイヤーの軸方向に非常に強度の高い電子パルスを放出させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」を達成するための、平成24年度の研究実施計画を要約すると次の二点であった。1.レーザー装置の超短パルス化。2.プリプラズマ抑制のためのプラズマミラー作成、およびレーザー装置へのインストール。これらの内容は平成24年度までに達成された。さらに研究の目的を達成するために重要となる電子パルス測定の新手法を開発し、この結果はPhysical Review Lettersに掲載された。また、平成25年度に遂行予定であった電子パルスの高強度化に関しても研究を進め、得られた成果はPhysical ReviewLettersに掲載済みである。以上の結果より、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題における平成25年度の研究計画は、レーザー照射ターゲットの最適化による数1000fCの電子数を持つ超高輝度電子源の開発である。これを達成するため、ワイヤーターゲットを用いることによる超高強度電子パルス発生に関する研究を平成24年度までに行った。その結果、4,000,000fC(4百万fC)以上の電子が発生していることが確認され、このうち10,000FC(1万fC)以上の電子が短パルス電子源として利用可能であることが示唆されている。ワイヤーターゲットより発生する電子のエネルギースペクトルや空間分布等の特徴をさらに詳細に調べ、超高輝度電子源の開発を目指す。さらに、ワイヤーターゲットからの電子パルスを圧縮するための電子光学系の設計・製作を行う。平成24年度までに行った短パルス化のための技術と本年度行う高強度化のための技術を複合し、超高輝度短パルス電子源の開発を行う。
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