研究課題
本研究では、保障措置環境試料分析の迅速・効率化のため、原子核乾板を用いた核物質含有微粒子試料の同位体比事前評価と、レーザーアブレーション支援共鳴イオン化質量分析法(LA-RIMS)による同位体比の高精度分析により、プルトニウム含有微粒子の迅速分析法の開発を目指す。平成24年度は事前評価法と質量分析法について、それぞれ下記の項目を実施した。1.原子核乾板におけるα粒子飛跡解析の評価光学顕微鏡を用いた原子核乾板断層像の高速自動撮影システムと、一連の原子核乾板断層像に記録されたα粒子飛跡を画像認識により抽出し、飛跡の3次元形状を自動認識するプログラムからなる原子核乾板飛跡解析システムを開発した。ウラン鉱石に含まれるα崩壊核種起因のα粒子を3種類の原子核乾板(OPERAフィルム、NGITA乾板、NIT)に記録し、自動飛跡解析を行った結果、α粒子飛跡長分布が得られた。試料および乾板中でのα粒子輸送に関するモデル計算との比較より、NGITA乾板とNITがα粒子飛跡解析に適していることが示された。2.共鳴イオン化質量分析法のためのシステムパラメーターを用いた補正法の開発超ウラン核種に対しLA-RIMSにて同位体比測定を行う場合に不可欠な同位体比補正法として、共鳴励起用レーザー光源の発振波長・強度変動などのシステムパラメーターを取得し、補正を行う手法について基礎実験により概念検討を行った。レーザー加熱式原子源と2色2段共鳴励起イオン化過程を用いたYb共鳴イオン化基礎実験において、2本の共鳴励起用パルスレーザーのエネルギーと照射タイミングの差をイオン信号と同期させて取得し、同位体比測定結果を補正することで、同位体比測定値が補正されることを実証した。
2: おおむね順調に進展している
原子核乾板を用いた事前評価法のための原子核乾板におけるα粒子飛跡解析システムの開発と、LA-RIMSによる同位体比の測定時のシステムパラメーターを用いた補正法の開発を進め、基礎実験によりこれらの有用性を示しており、当初の計画に沿って研究開発が勧められているため。
微粒子試料のLA-RIMS分析のために、分析装置に精密ステージを導入するとともに、微粒子試料の事前評価と精密同位体比迅速分析における試料形状について検討を進める。ただし、プルトニウム含有微粒子試料の測定は、掌握している分析装置・施設の制約により困難であることから、プルトニウムの模擬物質として、ウランを含む微粒子の分析を行う予定である。
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Hyperfine Interactions
巻: 216 ページ: 47-51
10.1007/s10751-013-0842-5