研究課題
本研究では、高空間分解能を有する原子核乾板を用いることで、核物質を含む粒径1μm未満の微粒子試料から放出されるα粒子飛跡(αT)と核分裂飛跡(FT)を読み出し、試料のスクリーニング及びプルトニウムの同位体比の事前評価を行った後、高繰り返し率チタンサファイアレーザーを利用したレーザー共鳴イオン化質量分析法(RMS)を用いた同位体比分析により、保障措置環境試料の迅速・効率的な分析手法の開発を目的としている。平成25年度は事前評価法、同位体比分析法に関して下記の項目の開発を進めた。(1)原子核乾板を用いた微粒子試料中の核物質事前評価の開発・原子核乾板中飛跡の自動読み出しアルゴリズムの改良を行い、実験により原子核乾板(NIT)に記録された長さ14μm以上のαTの飛跡長分布が、モデル計算で得られた結果とよく一致することが確認出来た。・粒径1μmのPuO_2微粒子起因のαTがNIT中で飛跡長22~25μmと算出出来ることから、同乾板を使ったプルトニウム起因αT読み出しの適用可能性が得られた。(2)RIMSシステムの整備および補正法の開発・共鳴イオン化にレーザーを2本使用した場合のレーザーH-L照射タイミングに対するイオン信号量の相関モデルを作成し、補正法への適用を検討した。・フィラメントの抵抗加熱からなる安定原子源、高繰り返し率(5kHz)チタンサファイアレーザー、飛行時間型質量分析器を組み合わせたRIMSシステムの整備と、システムの各種信号の取り込み回路およびソフトウェアを開発した。・上記システムを用いたTiの1色1段および2色2段イオン化を行い、特に1色1段イオン化時の同位体比の波長依存性を調べ、補正により測定値を真値(天然同位体比)に近づけることが可能であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本年度中の研究により、事前評価法ではNITを用いたプルトニウム起因α粒子飛跡読み出しの適用可能性を実験的に示し、また、飛行時間型のRIMSにおいて波長を使った補正の有用性を示すなど着実な進展が見られる。一方で、RIMSの原子源の影響を抑制するため、フィラメント原子源のみに着目して研究を進めていることから、おおむね順調であると評価した。
本研究の最終年度となる平成26年度は、主に以下の3点を行う。(1)NITを用いた微粒子試料起因飛跡の読み出しから、事前評価法の適用性を評価する。(2)安定原子源を用いたRIMS補正法の開発による高精度分析の実証を行う。特に、システムの複数のパラメーターの変動を多次元データとして解析し、その相関を利用した補正法の確立を目指す。(3)プルトニウムの模擬物質としてウランを対象とした同位体比測定を行い、本提案手法の評価を行う。
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