1. 金星超高層大気の酸素イオン速度分布関数の特徴と酸素イオン加速メカニズムの関係 欧州探査器Venus Express (VEX)が観測した100eV以上の高エネルギー酸素イオン(O+)の速度分布関数の解析を詳細に行った。その結果、0+速度分布関数は領域よって違った特徴を示した。 (1)マグネットシース : リング分布の初相からローカルのプロトンのバルク速度に繋がった分布を示した。すなわち、イオンピックアップ後に急速にローカルのプロトンの流れに同化していくことが示された。 (2)誘導磁気圏昼側 : 0+のジャイロ半径(R_g)に応じて違った分布が見られた。R_g〈500kmのとき、リング分布を示し、イオンピックアップが起こっていることを示した。R_g>500kmtのとき、ローカルのプロトンのバルク速度に近い分布を示し、0+がローカルのプロトンと同化して運動していることを示している。 (3)誘導磁気圏夜側 : 磁力線と平行または反平行方向のビームが観測された。より詳細に調べると、磁力線方向、ローカル対流電方向、ExBドリフト方向の3次元速度空間で3次元的につながった特徴的な分布関数であることがわかった。我々はこの特徴的分布関数を金星磁気圏尾部に形成されるプラズマシート構造内でピックアップが起こったものを示していると提唱した。 2. 変化する惑星間空間磁場方向と酸素イオン流出量の関係 VEXの4年間の観測データの中から1)IMFのクロックアングルが30°以内の変化のとき(以下、小変化ケース)、2)30°以上変化するとき(以下、大変化ケース)の2通りに場合分けし、金星夜側で観測された10eV以上の酸素イオンの流出フラックスを比較した。その結果、小変化ケースは4.5x10^<24>s^<-1>、大変化ケースは5.6x10^<24>s^<-1>という流出率を得た。これらの値に大きな違いがないことから、IMF方向の変化は金星のエネルギーの高い酸素イオン(>10eV)の流出量に影響を与えないと結論づけた。
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