研究課題
1.遺伝学的手法を用いた、配偶者防衛行動に関与する遺伝子の同定以前TILLING法を用いて作成した神経ペプチド関連遺伝子の変異体を用い、配偶者防衛行動のアッセイを行った結果、配偶者防衛行動を示すことが出来ない変異体を発見した。また、それらの神経ペプチドは、攻撃行動や配偶行動にも影響を与えるとの知見があったことから、変異体を用いた行動検定を行った。その結果、配偶者防衛行動に異常を示した個体は、配偶行動に異常を示すことが明らかになった。よって、「オスーオスーメス」間の行動である配偶者防衛行動は、「オスーオス」間の行動である攻撃行動よりも、「オスーメス」間の行動である配偶行動へのモチベーションとの相関が高い可能性が高いということが示された。今回着目した神経ペプチドと行動異常との関係は、これまで薬理学的な検証でしか報告されておらず、遺伝学的に明らかにしたのは今回が世界でも初のことである。遺伝学的に関連性が明らかになったことで、当初から予定していた、「部位特異的に神経ペプチド発現神経の興奮を制御し、行動との関係を検証することで、行動に関与する神経を順遺伝学的に同定する」という手法が実現可能である可能性が高まった。2.TALEN法を用いた、神経ペプチド関連遺伝子のKO個体作成以前TILLING法を用いて作成した神経ペプチド関連遺伝子の変異体は、一塩基変異体であったため、ペプチドの受容体のような全長の長い遺伝子においては、変異があったとしても機能欠損には至らない可能性も高かった。よって、近頃メダカにおいてもその有用性が明らかになっている、TALEN法を用いて神経ペプチド受容体KO個体作成を試みた。その結果、塩基の除去によるフレームシフトと共に、直後に終始コドンが存在するような個体を作成することができた。現在かけあわせや育成を行っており、来年度中には行動アッセイに用いる予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、配偶者防衛行動に関与する神経ペプチド関連遺伝子を、遺伝学的に同定することに成功した。これまでこの神経ペプチドと行動との関係性は薬理学的な手法によって示されたものがほとんどで、遺伝学的に示した例はほとんど存在しない。また、この神経ペプチドは魚類だけでなく、哺乳類にもホモログが存在し、様々な社会性行動に関与するとの知見があることから、配偶者防衛行動の進化的起源を探る上では重要な発見であったと考えられる。
着目すべき遺伝子が何なのかを明らかにすることができたので、今後はその遺伝子が発現するどの神経が行動に必要であるかを検証する予定である。そのためにはその遺伝子のプロモーター取得が重要であり、当初は遺伝子の上流をプロモーターとして利用する予定であった。しかしながら、プロモーター活性として上流だけでは不十分であり、活性が弱い可能性があることを考慮し、BACを用いたコンストラクト作成を予定している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
Science (New York, N.Y.)
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10.1371/journal.pone.0068676
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2013/31.html
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/4416/