研究課題/領域番号 |
12J04545
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 喬裕 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 金属酵素 / 大量発現系 / 翻訳後修飾 / CODH |
研究概要 |
1)酵素変異解析 CO_2還元活性の高いCarborydothermus hydrogenoformans由来CODH-Vが、何故高いCO_2還元活性を示すのかを明らかとするため、CODH・Hを用いて酵素変異解析を行った。CODH-Vで置換の見られた活性中心配位子であるアミノ酸残基E295(CODH-IIではシステイン)を、それぞれアラニン、バリン、システインに置換した酵素変異体CODH-II C295A、C295V、C295Eを作製し各種活性や金属配位様式といった性状を解析した。結果、CODH-IIのCODH・V型置換体C295EのCO2還元活性は上昇しなかったものの、それぞれの変異体においてヒドロキシルアミン還元活性が増大した。またその活性中心の金属配位様式を解析したところ、全ての変異体において、本来の活性中心である[NiFe-S]クラスターのうち[Fe-S]部分における配位様式の変化は検出されなかった。また活性中心の基質との反応性や酸化還元電位は大きく変化していたことより295番目の残基は活性中心である[Ni-Fe-S]クラスター中のNiの配位に重要な影響を与えると考えられ各変異体ではNiが欠落している可能性が示唆された。本知見はcODHの酵素改良に重要な知見を与えうるものである。 2)効率的なCODH大量発現系の構築 CO_2利用技術への応用が期待されるCODHは5-7個の[Fe-S]クラスターを含む金属酵素であり、その活性中心は新奇な[Ni-Fe-S]クラスターを構成していることから大腸菌を用いた大量発現系の構築が困難であった。本研究では活性中心へのNi配位に注目して大腸菌を用いた大量発現系の構築を行った。好熱菌C.hydrogenoformans CODH-Iを用い、Ni挿入を効果的に行うために本種由来のCODHへのNi挿入に関与すると考えられるmatUrationタンパク質であるCooCの共発現ベクター(pTCooC)を作製し、[Fe-S]クラスター生合成系を搭載した共発現ベクターpRKISC、pTCooCによる共発現を行った。結果、CooCの共発現を行わなかった対照区と比較して約2.5倍活性の上昇が確認された。以上より、Coocの共発現系により活性中心へのNi挿入を大腸菌内において効率良く行うことができ、より高活性なCODHを大量かつ簡便に調製可能になりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵素変異解析実験において極めて重要な知見が得られた。また、CODH大量発現系の構築実験においても予想どおりの結果が得られたことから、本年度の実験は当初の計画以上に進行した。しかしながら、両結果とも論文にまとめ投稿したものの、採択されなかった。当初、今年度中に一方の原著論文が受理される予定であったことから、成果発表という点に関してはやや遅れているのが現状である。以上よりおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
1)酵素変異解析 ・酵素内の金属種Ni、Feを各変異体においてICP-MSにより定量し、野生型と比較し、変異の影響を精査する。 2)効率的なCODH大量発現系の構築 ・対照区(共発現なし)と共発現区それぞれにおいてNi量を定量し共発現の効果を精査する。 ・共発現区において宿主培養条件の最適化を行い高活性型組み換えCODH-1の獲得を目指す。
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