研究概要 |
本研究では,炭素系ナノ材料を高分子ナノ複合材料の充てん材として用いることにより,充てん材およびマトリックスそれぞれの長所を引き出した高性能を有する新規材料の創製を目的とした。充てん材としては,表面に願酸素官能基を有するナノダイヤモンド(ND)および酸化グラフェン(GO)を用いた。 1.セルロースナノファイバー(NFC)/NDナノ複合材料の創製 親水性であるNFCをマトリックスとし,水分散系を用いてNDを充てんしたナノ複合材料を作製した。ND表面がアニオン性であることから,カチオン性NFC(Q-NFC)を作製することによりQ-NFC/ND間にイオン結合を導入し,水を分散媒体として用いてQ-NFC/NDナノ複合材料を作製した。Q-NFCに対するNDの吸着を評価したところ,NDがQ-NFCに安定して吸着していた。作製したナノ複合材料はQ-NFCフィルムと同様の高透明性を保持していた。力学物性では,NDを充てんすることにより弾性率,引張り強度,降伏応力および強靱性が大きく増加した。負荷一無負荷を繰返す、繰り返し引張り試験を行い,Q-NFC/ND間には強い相互作用が働いていることが明らかにした。さらに,ナノ複合材料は高硬度を有しており,NDの特性を十分に引き出すことに成功した。 2.疎水性高分子ポリメタクリル酸メチル(PMMA)/GOナノ複合材料の創製 無乳化剤乳化重合を行いPMMAのエマルションを作製し,GOと混合および共沈させることによりナノ複合材料を1作製した。PMMA中でGOがナノ分散したことにより,作製したナノ複合材料は高透明性を有していた。引張り試験を行い,ナノ複合材料が高強度・高弾性率を有することを明らかにした。また,ナノ複合材料はPMMAフィルムと同様の破断ひずみを保持し,その結果,強靱性が飛躍的に増加した。さらに,GOを充てんすることによる熱物性およびバリア性の向上を明らかにした。したがって,PMMA中でGOをナノ分散させることにより,マトリックスおよび充てん材の長所を効果的に引き出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
当初2年目の研究計画の一部を先に行ったため,当初1年目の研究計画を優先して行う。 ポリビニルアルコールノナノダイヤモンドナノ複合材料およびポリビニルアルコール1酸化グラフェンナノ複合材料の成形加工を行い,その構造および物性を評価する。また,国内に限らず,海外での学会発表,および学術論文の投稿を積極的に行い,さらなる進展を目指す。
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