• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

南半球におけるカッコウ-宿主間の托卵をめぐる攻防

研究課題

研究課題/領域番号 12J04578
研究機関立教大学

研究代表者

佐藤 望  立教大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)

キーワード托卵 / 軍拡競争 / 共進化 / オセアニア / 生活史 / 熱帯
研究概要

センニョムシクイ属はテリカッコウ属の雛を排除する行動が知られているが(Sato et al. 2010 Biology Letter), この行動はこれまで進化しないと考えられてきた. センニョムシクイ属を調査する事で「托卵をめぐる共進化」のメカニズム解明が期待できる.
平成25年10月1日よりニューカレドニア南部州立公園にて, センニョムシクイ属とテリカッコウ属の野外調査をおこなった. その結果, 特に以下の成果をあげた.
1. センニョムシクイ属の新たな対托卵戦略と考えられる「雛の多型」の発見, 及びデータ収集
2. 托卵鳥の雛排除をおこなう宿主の性を判明.
3. 宿主及びテリカッコウ属の基礎生態のデータ収集.
次に托卵をめぐる共進化の全容を解明するため, シミュレーション及び数理モデルを用いた研究をおこない, 以下の成果をあげた.
1. 雛排除を進化させたのは, 宿主の生活史(産卵数など)の影響を受けている事を示唆.
2. 1の影響を考慮すると, 先行研究の仮説でも雛排除が進化しうる事を証明
3. 雛の多型が托卵による対抗戦略として成り立つかどうかを検証
野外調査によって, 研究目的1の「温帯地域と熱帯地域に生息するセンニョムシクイ属の対托卵戦略の解明」が進み, これまで発見されていなかった「雛多型」を発見する事ができた. この発見は研究目的2の「テリカッコウ属の雛擬態の進化要因の解明」を達成するための大きな要因となり, この発見によって, テリカッコウ属による雛擬態は対托卵戦略の対抗戦略である可能性が強く示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

目的の1つ目である托卵システムの解明については新発見を含め, 多くのデータを収集した. 特に今年度は雛排除が宿主の雌雄どちらがおこなっているのかを知る為に必要な血液サンプルを採取する事に成功したため, 今後は行動生態学的手法だけでなく, 認知進化学や集団遺伝学で考察する事も可能となった. 一方, 2つ目の目的である雛擬態の進化要因の解明は, 必要な雛のデータが順調に取れており, 今後シミュレーションによる解析を行なう.

今後の研究の推進方策

3年間の野外調査で, 研究対象種の基礎生態のデータ, DNAサンプル, 繁殖に関するビデオデータなどの蓄積をおこなった, これらの情報を元に, 今後はデータを論文化する事を最優先する. また, これまでの野外データから, 托卵の対抗戦略(雛多型)がどのように進化したのかを行動生態学的な手法だけでなく, 分子生物学的手法や認知科学的手法を取り入れ, 遺伝様式や, 進化メカニズムをより詳細に研究する事が可能であると確信している. 今後はこれらのデータを蓄積しつつ, 学融合をおこなう事で, 共進化メカニズムの解明に挑戦する.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Gourmand New Caledonian crows munch rare escargots by dropping2013

    • 著者名/発表者名
      Keita D. Tanaka, Yuji Okahisa, Nozomu J. Sato, Jorn Theuerkauf & Keisuke Ueda
    • 雑誌名

      Journal of Ethology

      巻: 31 ページ: 341-344

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mutual feeding by the shining cuckoo (Chrysococcyx lucidus layardi) in New Caledonia.2013

    • 著者名/発表者名
      Yuji Okahisa & Nozomu J. Sato
    • 雑誌名

      Notornis

      巻: 60 ページ: 252-254

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒナ型フィギュアの行く末 : カレドニアセンニョムシクイのヒナ識別実験2013

    • 著者名/発表者名
      田中啓太・佐塵望・岡久雄二・Jörn Theuerkauf・上田恵介
    • 学会等名
      日本行動学会
    • 発表場所
      広島大学・広島
    • 年月日
      2013-11-30
  • [学会発表] 捨てるならどっち? カッコウ卵か雛か鳥学会2013年度大会自由集会『托卵のさらなる謎に挑む : 熱帯性カッコウ類の生態から浮かび上がった新たな理論展開』2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤望・三上修・田中啓太・上田恵介
    • 学会等名
      日本鳥学会
    • 発表場所
      名城大学・愛知
    • 年月日
      2013-09-14
  • [学会発表] テリカッコウ雛による擬態と頻度依存選択―よりコアな進化理論の導入へ鳥学会2013年度大会自由集会『托卵のさらなる謎に挑む : 熱帯性カッコウ類の生態から浮かび上がった新たな理論展開』2013

    • 著者名/発表者名
      田中啓太・三上かつら・三上修・佐藤望・上田恵介・山道真人
    • 学会等名
      日本鳥学会
    • 発表場所
      名城大学・愛知
    • 年月日
      2013-09-14
  • [学会発表] カッコウによる宿主の操作~カッコウが卵を抜き取ると、宿主は卵を受け入れてしまう~鳥学会2013年度大会自由集会『托卵のさらなる謎に挑む : 熱帯性カッコウ類の生態から浮かび上がった新たな理論展開』2013

    • 著者名/発表者名
      三上修・田中啓太・佐藤望・上田恵介
    • 学会等名
      日本鳥学会
    • 発表場所
      名城大学・愛知
    • 年月日
      2013-09-14
  • [学会発表] こんなにたくさんエスカルゴを食ったのは誰だ? ―ニューカレドニア・巨大シダ公園より―2013

    • 著者名/発表者名
      田中啓太・岡久雄二・佐藤望・Jörn Theuerkauf・上田恵介
    • 学会等名
      日本鳥学会
    • 発表場所
      名城大学・愛知
    • 年月日
      2013-09-14
  • [学会発表] エピジェネティックな擬態? テリカッコウ類による宿主雛擬態と宿主利用2013

    • 著者名/発表者名
      田中啓太・三上かつら・佐藤望・上田恵介・山道真人
    • 学会等名
      日本進化学会
    • 発表場所
      筑波大学・茨城
    • 年月日
      2013-08-30
  • [学会発表] 托卵鳥の宿主による雛排除行動が進化した要因を探る2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤望・三上修・岡久雄二・中原亨・上沖正欣・田中啓太・上田恵介
    • 学会等名
      日本進化学会
    • 発表場所
      筑波大学・茨城
    • 年月日
      2013-08-30
  • [備考]

    • URL

      https://sites.google.com/site/nozomujsato/home

URL: 

公開日: 2015-07-15  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi