研究課題/領域番号 |
12J04589
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
増井 翔史 九州大学, 生体防御医学研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ジスルフィド結合 / Ero1α / PDIs / 小胞体品質管理 |
研究概要 |
我々はこれまで、細胞内でのタンパク質品質管理機構について、新生ポリペプチド鎖へのジスルフィド結合の形成という観点から研究を展開してきた。高等生物細胞の小胞体において、ジスルフィド結合の形成を介した酸化的フォールディングを行う蛋白質Ero1αは小胞体におけるタンパク質ジスルフィド形成において中心的役割を担う酸化酵素である。しかしながら興味深いことにEro1αは小胞体内在のためのリテンションシグナルをもたない。そこでEro1αは、ゴルジ体においてPDIファミリータンパク質の一つであるERp44と結合することで、小胞体へと逆行輸送されることが報告されている。本研究は小胞体-ゴルジ体間に存在するpH勾配に着目し、ERp44のpH依存的な構造変化機構やその構造変化に基づく機能制御機構の解明を目的として行っている。初年度である今年度はERp44の様々な変異体を作製し、Ero1αとの相互作用解析やANS蛍光プローブを用いた疎水性領域の変化を調べた。その結果として、ERp44のC末端に存在するtai1がpH依存的に開閉していることやERp44のN末端側に存在するaドメイン上のCysを中心とした水素結合ネットワークがpH依存的なtailの開閉制御を行っていることを明らかにした。また、in vivoでの実験結果からこのpH依存的な構造の変化がEro1αのみならず、ERp44自身のリテンションにとっても必須であることを示した。この成果はERp44が小胞体品質管理のためにpH依存的な構造変化を行うことを明らかにし、ERp44サイクルという概念を確立するための第1歩となりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERp44変異体の作製、その後のErolαとの相互作用解析やANS蛍光プローブによる疎水性領域の変化など交付申請書に記載した今年度の研究予定はおおむね達成された。また今年度までに行った内容をまとめた論文をMolecular Cellに投稿し、現在in pressである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ERp44-Ero1αの複合体を用いた結晶構造解析に挑んでいるが、結晶が上手く得られていない。そこで来年度は複合体の結晶作製と平行して結晶の必要ないX線小角散乱によるデータの収集・解析を行う。また、ERp44をそのモデル基質との複合体の状態で結晶化スクリーニングを並行して行い、複合体作製に関わるERp44のアミノ酸を特定する。さらに細胞内にトランスフェンクションしたERp44(タグ付き)について免疫沈降を行い、ERp44結合蛋白質をプロテオミクス的手法により同定する。その後、同定した基質についてパルスチェイス実験を行い、ERp44に依存した高次構造形成の経時変化を観測する。これにより基質蛋白質の成熟化におけるERp44の関与を検証する。
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