研究課題/領域番号 |
12J04630
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
相澤 里沙 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | インドネシア / 民族誌 / 宗教 / マイノリティ / 宗教人類学 |
研究概要 |
今年度は、インドネシアの宗教制度史に関する文献の収集および分析と、ダヤク系部族のカハリンガンに関する資料収集および現地調査を行った。 2013年1月27日~2013年2月10日の期間は、オランダのライデンにある王立言語地理民族学研究所の図書館にて、インドネシアの宗教史に関する文献と、中央カリマンタンのモノグラフやダヤク族の民族誌を収集し、精読・分析を行った。 2013年2月23日から2013年3月16日の期間は、インドネシアのパランカラヤにて、ヒンドゥー・カハリンガン教大評議会(MBAHK)を訪問し、資料収集とインタビューを行った。インドネシアは公認宗教制を採用しているため、「宗教」に当てはまらない信仰をもつ場合、不利益を生じる。カハリンガンは、1980年に「宗教」として公認されたが、ヒンドゥーの一派として認定されたのである。その際、重要な役割を果たしたのがMBAHKだった。MBAHKでは、公認化に関する文書や経典、教科書等を収集したほか、事務局関係者へのインタビュー、礼拝の観察を行った。また、同市にあるヒンドゥー大学の図書館では、当該大学で使用している教材を複写することができた。これらの調査から、カハリンガン信者が国家による「宗教」の定義をいかに解釈しているか、それを踏まえたうえで自らの信仰をいかに再定義しているか、そしてそれが実際の生活にいかに影響しているかを考察した。 本年度の研究によって、カハリンガンの現在の動向を知ることができ、彼らの運動が政治、経済などと密接な関わりをもって展開していることがわかった。またヒンドゥーとの関係からは、カハリンガンの運動を局地的な運動としてではなく、より大きな文脈の中で捉える必要性が明らかになった。このことは、インドネシアの宗教的マイノリティだけではなく、諸宗教の動きを理解するうえでも、非常に重要な点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドネシアにおける宗教的マイノリティの一つであるカハリンガンに関する資料収集と現地調査によって、信者たちによる地位確立運動の試みを具体的に理解することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はインドネシアに長期滞在し、調査する予定である。具体的には、カハリンガンと公認宗教の関係について、教育制度から調査、分析する。また信者のライフヒストリーから、地位確立の試みと、それによって実生活において生じた変化を分析する。
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