研究概要 |
光応答性結晶の結晶成長を制御し、新たな機能性材料の創生を目指している。フォトクロミック化合物は、光照射により可逆的に異性化し、色だけでなく分子構造、屈折率、誘電率、酸化還元電位などの様々な化学的および物理的性質も可逆的に変化する。フォトクロミック化合物の中でもジアリールエテンは、高い熱安定性と繰り返し耐久性を有し、溶液中だけでなくアモルファス状態や結晶中でも光異性化が進行する。これまでに、ジアリールエテン結晶のアモルファス状態からの結晶化による表面粗さの増大に伴って水に対する接触角が82°から117°へと約35°変化することを見出し、また紫外光照射によるフォトクロミック反応を用いることで結晶化を制御できることを報告している(D.Kitagawa et al.,Chem.Commun.2010,46,3723)。本年度は、ジアリールエテン結晶の結晶成長に注目し、水に対する接触角が150°を超える超撥水性表面の発現および紫外光照射による結晶成長の光パターニングについて研究を行った。ジアリールエテンのアモルファスフィルムは、ジアリールエテン/ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のトルエン溶液をスライドガラスにキャストすることで得られた。このアモルファスフィルムを130℃で1時間加熱した後、180℃で1時間加熱すると、オストワルド成長により結晶が大きく成長することが明らかとなった。これは、ジアリールエテン結晶の融点が約180℃付近であり、微小結晶が容易に融解し、大きな結晶に取り込まれやすくなったためだと考えられる。また、そのときの水に対する接触角を測定すると154°の超撥水性を示すが、逆さにしても水滴が落下しないペタル効果を示した。また、フォトマスクを用いて結晶成長のパターニングを試みたところ、約10μmの解像度でのパターニングに成功した(D.Kitagawa et al.,Chem.Sci.,2012,3,1445)。
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