研究課題/領域番号 |
12J04644
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 奈緒子 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ニッチ / 造血幹細胞 / 脱細胞化骨髄 / 微小環境 / 生着 |
研究概要 |
人工的な造血ニッチの開発を目的として脱細胞化組織に着目し、骨髄の脱細胞化について検討した。これまでに、高静水圧処理法を用いることで、生体骨髄に類似した構造を有する脱細胞化骨髄の調製を行った。調製した脱細胞化骨髄をラット皮下に移植した際に、本来は造血がなされない皮下において、赤色骨髄のような現象が観察された。これは脱細胞化骨髄が血液系細胞を誘導し、そこで血液産生を引き起こした可能性があると考えている。 本年度は、血球系に分化する能力を有する幹細胞の脱細胞化骨髄への生着を評価した。第一段階としてEGFP発現マウスに脱細胞化骨髄を移植し、脱細胞化骨髄を赤色骨髄化させた。その後、致死量X線照射(8Gy)によって造血機能障害を与えたマウスに、EGFP陽性細胞を含有する脱細胞化骨髄を再度移植し、EGFP陽性細胞によって致死量X線照射マウスの造血能が再構築されるかどうかを長期的に評価した。遺伝子発現解析により、赤色骨髄化した脱細胞化骨髄の移植1週目において、致死量X線照射マウスの末梢血中にEGFPの発現が観察された。さらに、フローサイトメトリーにより、致死量X線照射マウスの末梢血中にEGFP陽性細胞が確認された。また、同マウス大腿骨の骨髄細胞にてもEGFP陽性細胞が確認された。これは、第一段階で皮下に移植した脱細胞化骨髄に造血細胞が生着しており、さらにその造血細胞が致死量X線照射マウスの末梢血中を循環していることを意味している。また、末梢血を介して、致死量X線照射マウス本来のニッチである大腿骨の骨髄にも生着していることが示された。以上より、脱細胞化骨髄に造血細胞の生着が確認され、脱細胞化骨髄の人工的な造血ニッチとしての応用可能性が示された。今後、生着した造血細胞が自己複製能を有する造血幹細胞を含有しているかどうかも評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初交付申請書に記載した計画通りに実験が進んでおり、順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は生着した造血細胞が自己複製能を有する造血幹細胞を含有しているかどうかを評価する予定である。同時に、脱細胞化骨髄を用いた細胞培養実験を行う。脱細胞化骨髄に造血支持細胞である可能性が指摘されている細胞を脱細胞化骨髄にin vitroで播種・培養する。脱細胞化骨髄への細胞接着性を組織学的で評価し、細胞分化能を酵素活性染色および遺伝子発現解析を用いて経時的に評価する。さらに、造血支持細胞を播種した脱細胞化骨髄をマウスに移植し、観察および組織学的に評価することで、造血支持細胞が導く細胞浸潤や造血機能への影響を検討する。
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