研究課題/領域番号 |
12J04701
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
上沖 正欣 立教大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 行動生態学 / 音声コミュニケーション / さえずり / 繁殖生態 / 親子判定 |
研究概要 |
昼行性鳥類は普通、昼間にさえずるものであるが、いくつかの種では夜間もさえずることが知られている。その意味は未だよく分かっておらず、なぜ夜間さえずりが進化したのか、その適応的意義をウグイスの仲間であるヤブサメを主な対象種として解明するのが本研究の目的である。 当年度は、ヤブサメの繁殖期である4月から8月にかけて愛媛県及び北海道で野外調査をおこない、9月から3月までは室内実験をおこなった。野外調査では、両地点で個体数は同程度であったにもかかわらず、北海道では愛媛よりも夜間さえずり活動が少なく、前回までの結果と比較するとさえずり活動に年変動が認められた。このようなさえずりをもつ種はこれまでに報告がなく、新しい発見である。成果は、8月にスウェーデンで開催された国際行動生態学会、9月に東京大学で行われた鳥学会2012年度大会にて発表した。室内実験では、次世代シーケンサーを用いて京都大学野生動物研究センターと共同実験を行い、野外調査により得られた血液サンプルよりヤブサメの遺伝子マーカーの開発に成功した。開発したマーカーを使って親子判定した結果、観察された繁殖行動から予測された値よりもつがい外子は少なかった。これは渡来当初にのみ夜間さえずりを行うことと何らかの関連があるかもしれない。開発した遺伝子マーカーは、遺伝的保全や種間比較のために将来役立つ有用なものであるため、データベースへ登録し、概要論文を国際誌に投稿中である。 今年度はさえずりの年変動データが蓄積できたことと、遺伝子マーカーの開発に成功したことが大きな成果である。また、研究内容をサイエンスカフェで一般向けに講演するなど、普及活動にも努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度であったが、野外調査によるデータ蓄積が進んだことと、開始時点では開発が困難と思われていたヤブサメのマーカー開発に成功したことで、夜間さえずりと繁殖成功度に関する間接的データを収集することができたため、順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はより詳細な行動追跡と実験的手法を用いて解析を進めることで、夜間さえずりの適応的意義に関する直接的なデータを収集すること、種間比較をすること、研究成果を論文としてまとめることが目標である。
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