研究概要 |
本研究の目的は, 多様な論理の妥当性を統一的に説明しうるような「二元論的/双対的な意味のモデル」を, 「証明論的意味論」の立場から確立することである。平成25年度はこの目的に照らして(1)「推論のパラドクス」に対する証明論的意味論の立場からの解明, および(2)双直観主義論理(Bi-Intuitionist Logic)の形式的性質, の2点にかんして研究を行なった。 (1)推論のパラドクスとは, 演繹的推論の正当性と有用性という2つの特徴のあいだには衝突があるのではないかという問題である。この問題に対し, マイケル・ダメットは構成主義的な立場から, ある一定の解明を与えているが, 本研究では彼の議論を批判的に検討したうえで, 二元論的/双対的な意味のモデルである「双側面説」の立場から, オルタナティブな解明を与えた。この双側面説という考え方は, 本研究の求める証明論的意味論に概念的な基礎を与えるとともに, 推論のパラドクスにかんする考察を通じて, 構成的な証明のもつ認識的な意味あい, 証明の経験的言明への応用可能性, 意味論的な真理概念など, 演繹的推論にかかわる重要諸概念をある一定の見取り図のもとで説明することを可能にする。この点にかんする研究成果は, 日本科学哲学会で口頭発表し, その内容を論文にしたものを現在投稿中である。 (2)双直観主義論理とは, 直観主義論理とその双対に当たる双対直観主義論理を融合して得られた論理である。直観主義論理が「証明」概念をベ一スとした論理だとすれば, 双対直観主義論理は「反証」概念をベースとした論理であり, 双直観主義論理は証明と反証の両方を扱う論理である。本研究では, 2つの論理を融合して双直観主義論理を得るさいに, 証明と反証の概念のあいだにどのような関係が前提される必要があるかを, それらの論理に対するクリプキ・モデルとシークエント算の体系を通じて考察した。この点にかんする研究成果は, オーストラリア論理学会の年次大会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の成果を踏まえ, 次の2点にかんして研究を進める。(1)双側面説の考え方を精緻化し, さらに拡張する。とくに現在の枠組みを様相論理を扱えるよう拡張することで, 双側面説が, 多様な論理に対する統一的な視点を提供するということを示す。(2)双直観主義論理の形式的性質についてさらなる吟味を加え, さらにその哲学的な意義を検討する。
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