研究課題/領域番号 |
12J04722
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
半沢 蛍子 早稲田大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 内容言語統合型学習プログラム / 大学英語教育 / Voice Onset Time(VOT) / 第二言語音声習得 / インプット / 音声習得の促進 |
研究概要 |
今年度の研究では、内容言語統合型学習プログラムを採用している大学学部の教室内でのインプットの音声的特徴(Voice Onset Time; VOT)の検証実験を実施した。これは2011年度に行なった修士論文研究で、「内容言語統合型学習学部プログラムの学生の音声的特徴(VOT)が、入学後15ヶ」月間で変化を生じた」という結果から、内容言語統合型学習プログラムを採用している大学学部での生活において、学生が音声習得プロセスに必要なインプットの要因を探るために行われたものである。 第二言語習得の分野においては、音声習得におけるインプットの重要性は多く指摘されている。第二言語音声習得の分野でも2000年代に入り音声習得におけるインプットの役割が議論されるようになり、Flege(2009)やMoyer(2009)では、学習者が実際に受けるインプットの詳細な測定、分析の必要性が指摘されている。しかし、これまでの研究では一般に実験室内で取られたデータをもとに「インプット」を議論しており、実際学習者が受けるインプットを詳細に分析した研究はほとんど行われてこなかった。 そのため本年度の研究では、2011年度研究で学習者の音声習得が見られた内容言語学習型学習学部プログラムで、学習者が主たる音声インプット源としている講義での英語及び日本語母語話者の授業内での英語の発話を録音し、その音声的特徴の比較分析を行った。その結果、英語及び日本語母語話者の英語の発話は、話者内の変化が非常に大きく、両者の間に明確な差がないことが示された。これは母語話者と非母語話者の学習者に対するインプットは異なる、という従来の説とは異なるものである。またこの結果はこれまでの「目標言語母語話者からのインプット」が第二言語音声習得を促進する唯一の要因とは限らないことを示しており、今後の第二言語音声習得を考える上で、非常に示唆的な結果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は学習者の音声習得を促進する要因についての研究を行ったため、当初の計画からは少し外れたものとなっている。しかし、本年度の研究で得られた結果は今後の学習者の音声習得を検証する上で非常に示唆的であったために、研究全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は学習者の音声習得を縦断的に検証する。具体的には今後の研究では内容言語統合型学部プログラムに入学した学生の入学当初からの音声を一年間に渡り採取し、これまで行っていたVOTだけでなく、/r/音、母音に関しての分析を行っていく。
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