本研究は、数学・理科等の科目内容を外国語で教え・学ぶ「Content-based instruction(CBI)」、「Content and language integrated learning (CLIL)」といった内容と第2言語を同時に学ぶ学習プログラムが、特に大学レベルの日本人英語学習者の第2言語音声習得に取ってどの程度効果的であるかを検証し、日本人英語学習者の第2言語(英語)音声習得のメカニズムを探ることを目的としている。 本年度はこの目的を達成するために前年度までに行った同プログラムを採用している大学学部の学生(国際教養学部)と、伝統的な英語教育を行っている大学学部の学生(商学部)とを対象にした発音実験の最終的分析を行った。 分析の結果、無声破裂子音の特徴であるVoice Onset Timeは、国際教養学部で1年間英語を使用して授業を受けた学生はより英語らしく破裂音を発音できるようになったことを示したが、英語のこの変化は自身の母語である日本語の生成が影響していることが分かった。また母音の習得に関しては、国際教養学部の学生は12月までに変化を示したが、その変化には母音差と、より英語の母語話者に近づくものと、逆に遠ざかるものがあることが分かった。さらに2つの全体的印象(なまりの程度・内容の聞き取りやすさ)、及び6つの分析的印象からなる包括的英語音声能力の分析から、国際教養学部の学生では内容の聞き取りやすさ、文法面・流暢性の大きな向上に加え、イントネーションの向上も見られた。しかしこの上達は5月段階で比較的低い英語能力を持つ学生に現れ、もともと高い英語能力を持つ学生では、その向上はあまり見られなかった。また発音・語彙使用の面での向上があまり見られなかった。
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