研究概要 |
本研究では、アントラセン環で囲まれたナノ空間を有する金属架橋カプセルにナノカーボンを内包することで、ホスト-ゲスト間の金属-πおよびπ-π相互作用を誘起させると共に、それらの包接錯体を精密配向させることで複合機能性材料の創製を目指した。我々は最近、アントラセン環を有する有機配位子とPdイオンとの自己組織化により、Pd架橋カプセルを構築し、その内部空間へのフラーレンC_<60>の定量的内包に成功した(N.Kishi, MYoshizawa et al., JACS, 2011, 133, 11438-11441)。そこで本年度は、Pd架橋カプセルによるC_<60>の部分骨格を有するナノカーボン類(コラヌレン)の内包および、新規Ag架橋チューブによるC_<60>やその誘導体の内包と放出を達成したので報告する。 Pd架橋カプセルのCD_30D/D_2O混合溶液にお椀型ゲストのコラヌレンを加え加熱撹拌することで、選択的に2分子のコラヌレンを包接したPd架橋カプセルを得た。この詳細な分子構造はNMR、ESI-TOF MSおよびX線結晶構造解析によって明らかにした。その結晶構造では2分子のコラヌレンはお椀を向かい合わせる様に内包されており、カプセルに内包されることで特異な配置を取ることが明らかとなった。 また、等構造の有機配位子と硝酸銀、フラーレンC_<60>の3成分をアセトニトリル中、遮光下で撹拌することにより、C_<60>を内包したAg架橋チューブを新規に合成した。その構造はNMR、ESI-TOF MSおよびUV-visによって確認した。また、チューブに内包されたC_<60>は可視光を照射することにより、定量的に放出されることがUV-visからわかった。さらに、チューブにはC_<60>誘導体(マロン酸ジエチル付加環化物、インデン付加体)も内包および放出可能であることがわかった。
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