研究課題
本年度は平成24年度の研究目的であった繁殖雌馬の末梢血リンパ球におけるプロジェステロン(progesterone:P_4)刺激-progesterone induced blocking factor(PIBF)-サイトカイン産生系のリアルタイムRT-PCR法による解析系を確立できた。そこで、それを使用して交配後に受胎または不受胎であった3から20歳齢のサラブレッド繁殖用雌馬繁殖雌馬において交配後8日および15日において採血を行い、リンパ球のマイトジェンであるphytohemagglutinin(PHA)およびP_4を用いた培養系においてTreg関連遺伝子、IL-17およびPIBF遺伝子発現量の測定を行い比較検討した。その結果、1.交配後8日におけるPHA刺激培養において不受胎群は受胎群と比較してFoxp3は低値を示し、IL-17は高値を示したが、PIBFは2群間で差がみられなかった。2.PHA+P_4,刺激培養において、不受胎群は受胎群と比較してFoxp3は低値を示したが、IL-17およびPIBFは2群間で差がみられなかった。3.交配後15日におけるPHAまたはPHA+P_4刺激培養において2群間で差はみられなかった。4.血中P_4濃度は、交配後8日において2群間で差はみられなかったが、交配後15日において不受胎群は受胎群と比較して低値を示した。以上の結果より、交配後8日において不受胎群は受胎群と比較してFoxp3が低値を示し、IL-17は高値を示したことから、不受胎の馬では妊娠初期において免疫寛容を誘導する制御性T細胞の分化誘導が促進されにくく、炎症を惹起するTh17の分化誘導が促進されやすい状態にあることは不受胎の要因となることが示唆され、これらの変化にプロジェステロンが関与している可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した研究の目的に従って実験を進めており、一定の成果が得られていることから、おおむね順調に進展している。
本年度において、P_4に対する反応がどの免疫細胞を中心に起こるのか、またどの時期から起こっているのかについては明らかとならなかった。このことを踏まえ、来年度は交配前から交配後にかけて採血を行い、リンパ球の中でも中心的な役割を果たすと考えられているCD4^+T細胞およびCD8^+T細胞におけるP_4刺激-PIBF産生-サイトカイン産生系について調査する。
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