研究実績の概要 |
本研究は,赤潮の発生,貧酸素水塊形成,青潮の発生といった環境問題が相次ぐ富栄養化した内湾を対象に人工衛星リモートセンシングを用いた環境モニタリングシステムを開発することを目的としている.特に,赤潮の空間的挙動を明らかにするため,クロロフィルa(Chl-a)と浮遊懸濁物質(SS)の推定モデルを開発することに焦点を当てた.これらの目的を達成するため 2010年6月~2013年9月まで月1度の頻度で現地観測を実施した.観測地点ではリモートセンシング反射率,植物プランクトン,有色溶存有機物(aCDOM),デトリタス(ad)の光吸収係数,Chl-a,SSを測定した.結果として,東京湾におけるChl-aとSSは,両者で良好な相関関係が認められ,主に有機物が支配的であることが分かった.また,東京湾のaCDOMは塩分と良好な関係があることが認められ,CDOMは概ね河川起源であることが分かった.次にChl-a推定モデルを開発するため,クロロフィル蛍光の増減を利用したFLHに対し,ポイント的な連続モニタリングにより得られた実測のChl-aを逐次同期することで概ね良好な精度でChl-aを空間的に推定することが可能になった.加えて,aCDOMを推定するため,青色域と近赤外域のバンドに基づいた推定モデルを提案し,湾内における河川起源の水塊の拡がりの推定が可能となった.さらにQAAを東京湾に適した形に改良することによりadを推定することが可能となった.次に開発した推定モデルによりChl-a,aCDOM,デトリタス,水温の空間分布を明らかにした上で実測の水質,気象データの時系列結果と併せて考察を行うことにより,夏季と冬季における赤潮分布の形成過程,赤潮の発生要因の解明を行った.その結果,赤潮分布の形成要因を考察し,発生し易い箇所を特定した.これは将来的に赤潮対策を行うための重要な知見になると考えられる.
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