研究課題/領域番号 |
12J04771
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 敦史 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 全合成 / C-H結合直接変換 |
研究概要 |
ヘテロ芳香環-ヘテロ芳香環ビアリール骨格は、生物活性天然物に多くみられるとともに医農薬化合物にも頻繁に活用される重要構造単位である。一方、3次元的骨格を有する生物活性物質は、溶解性や活性部位に対する選択性の点で平面骨格を有する化合物よりも優れている場合が多く、創薬の分野で注目を集めている。そのため、ビアリール骨格や3次元骨格を有する様々な生物活性物質の統一的合成法の確立は、基礎と応用の両面から極めて重要な課題といえる。 本研究者は生物活性物質の最小単位としてインドール類、アジン類、チオフェン類などのヘテロ芳香族化合物を選定した。これらをユビキタスに存在するC-H結合のみによって連結させ、さらに脱芳香族化反応を用いることで複雑な3次元骨格へと展開できると考えた。平成24年度、本研究者は生物活性天然物であるルンズリン類をターゲットとし、その全合成研究に着手した。ルンズリン類は8員環、3員環が縮環したジヒドロインドール骨格を有するなど複雑でユニークな構造的特徴を持つインドールアルカロイドである。またルンズリンBはB16メラノーマ細胞に体する顕著な毒性を示すため、新規抗がん剤のリード化合物として注目されている。そのためこれらの類縁体を一挙に合成する統一的方法論の開発が強く望まれる。はじめに主骨格である8員環を構築する鍵反応の開発に取り組んだすなわちピロールとインドールがエチレン鎖で架橋された化合物とノルボルナジエンとのC-H結合直接変換を用いた環化反応を検討した。その結果、ピロールとノルボルナジエン間で結合が形成された付加体が得られることを見出した。この付加体は想定する反応機構から得られたものと考えられるため、さらに反応条件の検討を行うことで8員環化合物の合成が達成できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
反応条件を種々検討した結果、ピロールとノルボルナジエン間で結合が形成された付加体が得られることを見出した。しかし、インドールーノルボルナジエン間でさらに結合が形成された目的の8員環構築には至らなかった。そのため、本研究は当初の計画と比較してやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
得られた付加体は想定する反応機構から得られたものと考えられるため、これまでの反応条件の検討の方針は間違っていないと言える。今後は用いる遷移金属、酸化剤、添加剤、反応溶媒などをさらに検討することで8員環の合成を目指す。また、ノルボルナジエンに代わる2炭素ユニットの検討や今までとは異なる合成ルートの検討も平行して行っていく。
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