銀河系中心領域で観測された二重らせん星雲に付随する分子タワーの形成機構を調べるために回転する中性水素(HI)クランプとジェットの相互作用計算を実施した。初期状態は熱的に安定な小さなHIクランプと温かい星間ガスが圧力平衡で接しているとし、超音速ジェットを注入した。さらに回転軸に対して斜めに入射するジェットのモデルについても計算した。HIガスはジェットの前方に形成されるバウショックによって圧縮されるが、密度増加により冷却率が上昇し、結果的に温度が下がり、さらに密度が上昇した。このような冷却不安定が誘起されることによりジェットを包み込むタワー状の低温高密度領域が形成された。軸対称なジェットのモデルでは低温高密度領域は回転軸に対して対称的な分布になるが、ひじ区対称なジェットのモデルでは回転軸に対して非対称な分布となる。 また、Westerlund 2星団方向で観測された直線状に延びた分子雲と円弧状の分子雲の形成機構を調べるために星間HIガスの密度分布を変化させたジェット伝播の磁気流体計算を実施した。ジェットが大きなHIクランプ1つと相互作用するモデルと無作為に分布した小さなクランプと相互作用するモデルについて計算した。HIガスのフィリングファクターを変えた計算を実施することで、低温高密度領域の形状やジェット構造のフィリングファクター依存性について調べた。分子タワー形成計算と同様の機構により低温高密度な領域が形成された。大きいHIクランプやフィリングファクターが大きいモデルでは、ジェットはHIガスを前方に掃き集めるため円弧状の低温高密度領域を形成する。それに対して、フィリングファクターが小さい場合は、ジェットはHIクランプの間を伝播できるため低温高密度領域はジェット軸方向に広がった分布になる。このようにして星間HIガス分布の違いにより形成される分子ガス分布が変化することを示した。
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