研究課題/領域番号 |
12J04798
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥村 好美 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | オランダの教育 / 学校評価 / 教育の自由 |
研究概要 |
本研究の目的は、オランダにおける学校評価の全体像を捉え、「教育の自由」と教育の質の保証との関係を明らかにし、日本において教育の質を守りながら地域や実情に応じた教育を実現するための示唆を得ることにある。そのために本年度は、①最も自由を享受してきたと考えられるオルタナティブ・スクールが、どのような学校評価制度を構想するのかを明らかにし、自由にもとつく多様性を認める学校評価制度の在り方を考察した。また、②オランダで用いられる学校の自己評価ツールの研究も同時に進めた。この2点については交付申請書に記載した計画通りであったが、加えて③日本における教育実践研究も進めることができた。 まず①の研究においては、オランダのオルタナティブ教育連盟が、2005年『監督枠組』を批判して新たな学校評価の形を提案した報告書「全ての学校は1っ」に焦点をあてて研究を進めた。これにより、オルタナティブ教育連盟が構想する学校評価の在り方を明らかにできた。そこでは、オルタナティブ教育連盟が懸念する学校評価の副次的影響が生じにくくなると考えられた。ただし、それを実現するための学校へのサポートという点に未だ課題がみられた。一方②の研究においては、1990年代後半、学校の自己評価を重視する学校評価制度がオランダで整備されつつあった頃に、より良い自己評価ツールを開発することを目指して行われたプロジェクトとその結果開発されたツールZEBOに焦点をあてて研究を行った。その結果、自己評価ツールZEBOの意義と限界を整理でき、日本の学校評価への示唆も明らかにできた。加えて③の研究で、日本の教育実践についての研究を進められたことで、学校評価の対象となる教育実践の内実を探ることができた。これらの研究により、日本への示唆を得ることを念頭に置きながら、オランダの学校評価の知見をふまえて「教育の自由」と教育の質保証の関係の一端を明らかにすることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究の目的」を達成するために、計画していた研究のうち、オランダにおけるオルタナティブ・スクールに焦点をあてた研究や、国が推し進める学力テストに関する研究などをこれまでに実施してきている。その際に、当初は想定できていなかったオランダの学校評価制度の近年の動向や、そこに見られる変化をふまえて研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「研究の目的」を達成するために、オランダの学校評価の全体構造を探究する研究を進める。そのために、まずは近年の学校評価政策の転換の背景にある理論をおさえたい。そして、これまでの研究をふまえ整理し直すことで、オランダの学校評価の全体構造を整理し、日本において教育の質を守りながら地域や実情に応じた教育を実現するための示唆を得ることを目指す。
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