本研究の目的は、オランダにおける学校評価の全体像を捉え、「教育の自由」と教育の質保証の関係を明らかにし、日本において教育の質を守りながら地域や実情に応じた教育を実現するための示唆を得ることにあった。 この目的を達成するために、まず、今年度は次の2つの研究を進めた。1つめは、オランダのオルタナティブ・スクールが構想する学校評価に関する研究である。昨年度の研究で、オランダで最も「教育の自由」を享受してきたと考えられるオルタナティブ・スクールが、どのような学校評価を構想するのかを明らかにし、自由にもとづく多様性を認める学校評価制度の在り方を考察した。今年度は、この昨年度の研究にもとづきつつ、オルタナティブ・スクールが実施する授業実践などもふまえ、考察を深めた。 2つめは、近年、オランダで導入された「教育ガバナンス」と呼ばれる政策プログラムに関するものである。これによって、学校評価の際に学力テストの結果が重視され、質が悪い学校であると判断されると制裁を受けることとなった。この「教育ガバナンス」の基礎には、もともと教育以外の分野に適用されてきた応答的規制がある。そこで、まず、この応答的規制がどのようにオランダの教育に引き取られ、どのように評価されているのかを整理した。その上で、「教育ガバナンス」の影響を考察した。 さらに、これらの研究を含め、この3年間で追究してきたオランダの学校評価に関する包括的な研究を行った。この成果にもとづき、博士論文を執筆した。
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