研究概要 |
本研究は、1909年から1939年までを主な対象としてイギリス企業の組織・戦略に所得税等の企業課税がどのような影響を及ぼしたのか探るものである。 平成24年度の研究活動から得られたことは、「イギリス多国籍企業と国際的二重課税問題」を中心に研究を進めるという方針が立ったこと、これについての仮説とそれを裏付けるであろう史料を発見したことである。得られた研究仮説とは、第一次世界大戦時期から特に重いものとなった所得税の賦課を軽減するために、イギリス多国籍企業はその進出戦略や、組織構造を変えたというものであった。進出戦略を変えたことを裏付けるであろう主な史料としては、The Times, Financial Times, The Economistの株主総会議事録掲載欄、House of Commons Parliamentary Papersから取得した政府報告書を得た。これらを用いることで、1916~1920年にイギリス帝国内で行われた所得税の国際的二重課税防止の調整により、同種の調整が行われなかった帝国外諸国への投資・進出に比して帝国内への投資・進出が容易となったことを明らかにすることができた。組織構造の変化を裏付けるであろう主な史料としては、London Metropolitan Archives所蔵のImperial Continental Gas Association社関連資料、Cheshire Record Office所蔵のBrunner, Mond社関連史料を得た。これらにより、両社が二重課税軽減のため外国支店を外国子会社に変更し、外国子会社により大きな権限を与えるなど組織構造を変えたことを明らかにすることができた。 なお、2012年9月15日には、社会経済史学会・近畿部会、経営史学会・関西支部合同部会にて.「20世紀前半イギリスにおいて所得税等税制が企業に及ぼした影響」という題で研究発表を行った。
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