研究概要 |
本研究は、1909年から1939年までを主な対象としてイギリス企業の組織・戦略に、所得税等の企業課税がどのような影響を及ぼしたのか探るというものである。研究期間の二年目となる平成25年度では、昨年度絞り込んだ「イギリス多国籍企業と国際的二重課税問題」を中心に研究を進めるという方針に従って一次史料の収集と、研究報告、投稿用論文の執筆を行った。 平成25年度の研究活動から得られたことは、「世界的に第一次世界大戦時期から特に重いものとなった所得税の賦課を軽減するために、イギリス多国籍企業はその進出戦略や、組織構造を変えた」という昨年度に提示した研究仮説をより確かめることが出来たことであった。1916~1920年にイギリス帝国内で行われた所得税の国際的二重課税防止の調整により、同種の調整が行われなかった帝国外諸国への投資・進出に比して帝国内への投資・進出が容易となったことを明らかにすることが出来た。加えて、各種社史、会社史料を用いることで、少なくないイギリス多国籍企業が国際的二重課税防止に苦しんだ結果、組織構造の変化を選択したことを明らかにすることが出来た。研究実施状況を詳述すると、6月1日には昨年度得た史料(The Times Digital Archive 1785-1985, Financial Times Historical Archive 1888-2006, House of Commons Parliamentary Papers, London Metropolitan Archives所蔵のImperial Continental Gas Association社関連資料)を用いて社会経済史学会の第82回全国大会にて研究報告を行った。11月からは指導委託教員Raymond G. Stokes教授の下、イギリスのグラスゴー大学にて約1年を予定する在外研究の実施に入り、グラスゴー大学所蔵の経営史史料(J & P Coats関連史料等)、イギリスのThe National Archives所蔵のlnland Revenue等政府関連史料、London Metropolitan Archives所蔵のLondon Chamber of Commerce等史料、ウォーリック大学・ModemRecords Centre所蔵のFederation of British Industries史料を入手することが出来た。3月にはフランクフルト・ゲーテ大学にて開催された第一回のWorld Conference of Business Historyにて、在外研究中に得た史料も用いながら研究報告を行った。
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