研究概要 |
大陸衝突帯深部での化学的分化プロセスとして重要な異種岩石間の相互作用の際に、岩石の部分融解が果たす役割を解明するため、南極、昭和基地南方地域のザクロ石珪線石片麻岩-ドロマイト質大理石互層と石灰珪質岩の記載岩石学的な研究をおこなうとともに、高温・高圧実験を開始した。 高温・高圧実験では、南極産のザクロ石-珪線石片麻岩の粉末と日本産の石灰岩の断片を8kbar,900℃で100時間,反応させた。この際、ザクロ石-珪線石片麻岩の部分融解を促進する為に、3wt%のH_2Oあるいは塩化ナトリウム水溶液を添加した。その結果、添加した溶液の組成の違いによって、次のような異なる実験生成物が確認された。 H_2Oを添加した場合:石灰質岩側から珪灰石,単斜輝石,斜長石,斜長石+黒雲母+サブアルミナスメルト塩化ナトリウム水溶液を添加した場合:石灰質岩側から、単斜輝石+スカポライト,単斜輝石+斜長石+メタアルミナスメルト 上記の事実は、以下の点を示唆する。 1南極の昭和基地南方地域で確認された石灰珪質'岩脈'は、ザクロ石-珪線石片麻岩と大理石の境界部における部分融解反応によって形成された。 2ザクロ石-珪線石片麻岩と石灰岩の境界部での部分融解において、塩化ナトリウム水溶液が、メルトの組成および出現する鉱物に対して、大きな影響を与える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温・高圧実験によって、ザクロ石-珪線石片麻岩と大理石の間の部分融解現象を明らかにした。特に、世界中のグラニュライト相変成地域の石灰珪質岩中に、普遍的に出現する鉱物である珪灰石,灰長石,スカポライトが高圧実験によって形成されたことは、本研究の大きな成果の一つである。 また、ザクロ石-珪線石片麻岩と石灰岩の境界部における部分融解反応の際に、塩化ナトリウム水溶液を添加することによって、メルトの組成および出現する鉱物の種類が変化したことは、地殻深部における流体の重要性を示すものであり、重要な発見といえる。
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