研究課題/領域番号 |
12J04840
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福井 康祐 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ストリゴラクトン / 枝分かれ / ストライガ / 根毛 / オーキシン / クロストーク |
研究概要 |
本年度取り組んだ研究は、標的指向性の高いストリゴラクトン(SL)ミミック(debranones)の開発、及び新規SLミミックdebranonesがシロイヌナズナの根に与える影響の解析、の主に2つの課題である。SLはStriga属の根寄生植物に受容され種子発芽を誘導するとともに、植物体内では枝分かれを抑制するホルモンとして作用する。私は前年度までの研究により、モノ置換フェノールから合成されるSLミミックdebranoneが植物の枝分かれ抑制特異的に作用することを見出し、本年度学術論文として発表した。本研究の更なる展開として、根寄生植物に対して高い活性を有する化合物の開発を目指し合成展開を行った。その結果、植物の枝分かれ抑制活性は低いが根寄生植物に対する効果の高い化合物が取得できた。これにより、植物の枝分かれ抑制と、根寄生植物の種子発芽誘導のそれぞれに選択的に作用する化合物の開発に成功した。このように天然物が複数の作用を示す場合、そのうちの特定の作用のみを再現できる合成化合物は天然物の作用を個別に解析する上で重要なツールとなる。そこで、植物の枝分かれ抑制作用と、根寄生植物の種子発芽誘導作用に続いて、化合物が根の形態形成に与える影響を解析した。SLが根毛の伸長を促進し、側根の形成を抑制することはすでに報告されているが、詳細については未解明の部分が多く、SLの植物ホルモンとしての枝分かれ抑制作用との関連もわかっていない。そこで、先に開発した選択的化合物とSL関連変異体を用いた解析を行った。その結果、化合物の枝分かれ抑制活性と根毛伸長促進活性にはある程度の相関が示唆される結果を得た。一方で、根の形態形成に関わる植物ホルモンとして古くから知られるオーキシンとの関連を調べたところ、SL処理により根でのオーキシンの内生量が著しく減少することが明らかとなった。このことは、SLの生理作用を理解する上で考え無くてはならない、他の植物ホルモンとのクロストークを調べるための重要な手がかりであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは異なるが、実用上の利点を持つストリゴラクトンミミックの合成に成功し、その応用展開を模索できる段階まで研究が進んでいること、及び近年注目されている植物ホルモン間のクロストークに関して、ストリゴラクトンとオーキシンの関係を新たな角度から調査できるきっかけを掴んだことが理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請当初、ストリゴラクトンの生合成研究を課題としていたが、本年度当該研究分野において非常にインパクトのある論文が他の研究グループから報告されたため、今後の研究で成果を上げることが非常に困難であると考えられる。一方で受容体研究においても多数の論文が報告されているが、受容体を特定する決定的なデータは報告されていないため、ストリゴラクトンの受容体特定に対するケミカルバイオロジー的アプローチを新たな課題として設定するとともに、研究に伴うケミカルツールの開発も新規課題として取り組むこととする。また、本年度の研究において端緒の得られたストリゴラクトンとオーキシンのクロストークに関しても、詳細に調査していくこととする。
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