研究課題/領域番号 |
12J04841
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
蕭 振豪 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 詩歌韻律 / 近体詩 / 軽清重濁 / 紐 |
研究概要 |
6~7世紀ごろに完成した中国古典詩の韻律は、中国語が声調言語であるため、4種の声調を2類即ち平声と仄(ソク)声に大別し、この平声と仄声の配列パターンによって音楽性のある韻律を構成している。しかし、中国古典詩にみられる「平仄」配置の韻律が、どのような過程で形成されたかは、いまだ充分明らかにされたとは言いがたい。本研究では分野の制約を打破し、中国文学の資料のみならず、日本で所蔵する悉曇学文献・諸国に収蔵されている出土文献-サンスクリットの韻律関係文献などの資料を収集する上で、7世紀以前の中国語の声調的特徴を解明し、声調の配列と近体詩・韻律の関係の解明に応用できないかを試みる。 本年度は、悉曇学(中国と日本における梵字に対する学問)と詩歌韻律の関係を中心に研究を進めた。東寺関係の文献をはじめ、中国で散逸した音韻学資料及び『悉曇蔵』関係の文献を調査するために、千葉県国立歴史民俗博物館と京都大学に所蔵している文献(『九弄十紐私釈圖』・『註梵字次第記』など)を整理し、2012年5月と10月に東洋文庫・宮内庁・公文書館に赴き、『韻鏡切要抄』と『五音声論』などの文献をマイクロ複写した。以上の資料を残本と比較し、軽清重濁及び「九弄十紐」と詩歌韻律の関係の解明を試みた。その成果は、「中國音韻學豊黄典誠學術思想國際學術研討會中國音韻學研究會第十七届學術討論會壁漢語音韻學第十二届國際學術研討會」と「京都大学-復旦大学東アジア人文研究博士課程学生討論会」で発表し、それぞれ『中国語学』(査読中)と)、『中央研究院歴史語言研究所集刊』に掲載する予定である。 6世紀に於ける中国語の詩歌韻律は、現代の演劇ではどのように把握されているのかを意識し、広東で流行っている「南音」というジャンルを取り上げ、「詞樂關係新探:試論平仄格律的形成及其音樂性」という論文をThe 24th North American Conference on Chinese Linguisticsで発表し、来年度に海外の雑誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究は極めて順調であるということが出来る。悉曇学の視野により「軽清重濁」の複数の定義を整理し、また「紐」という用語のサンスクリットの由来と解明している。従来の研究では解明されていなかった課題なので、以上の成果は、国内外の中国語音韻学者のみならず、中国文学の研究者にも大きな影響を与えると予想することが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続いて、インド詩論に関する知見を深めるよう努力を続け、中国語学の立場から改めて分析しようとする。声明研究の検討作業も継続し、京都周辺で声明を調査する予定である。以上の結果を踏まえて、論文の後半を完成につとめ、その一部を日本国内外の学会に投稿する。
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