研究課題/領域番号 |
12J04846
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
近藤 重人 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 湾岸産油国 / サウディアラビア / クウェート / 石油政策 / アラブ・イスラエル紛争 / パレスチナ問題 / エネルギー / 国際研究者交流 |
研究概要 |
研究代表者は、湾岸アラブ産油国、特にサウディアラビアとクウェートがアラブ・イスラエル紛争ないしはパレスチナ問題に対してどのような姿勢で臨んだかという点を、特に両国の石油政策に着目して研究しているが、今年度は1.第一次石油危機の前後(1970年-1974年)、2.イスラエル建国の時期(1945年-1949年)、3.現代(2000年-2012年)の三つの時期に絞ってこのテーマを考察した。 1に関しては、アラブの石油戦略の形成過程においてクウェートが重要な役割を果たし、他方その終息過程においてはサウディアラビアが重要な役割を果たしていたことを明らかにした。このことによって、最大のアラブ産油国であるサウディアラビアの動向に主に注目していた学説では捉えきれなかったアラブの石油政策形成における小国の役割の重要性を明らかにした。 2に関しては、アメリカのトルーマン政権の親イスラエル政策とサウディアラビアの親パレスチナ政策との対立が、サウディアラビアにあるアメリカの石油会社の活動に対して影響を及ぼさなかったのかという点を考察したが、石油利権を放棄するよう求める強い圧力が主として周囲の国からサウディアラビアに対して強くかかっていたものの、サウディアラビアは安全保障・経済の両面で依存するアメリカとの関係を重視したためアメリカの石油利権を守った点を考察した。 3に関しては、第二次インティファーダや2008年のイスラエルによるガザ攻撃などによってアラブ世論の反イスラエル感情が高まる中で、サウディアラビアとクウェートがイスラエルを支持するアメリカに対して圧力をかけようとした形跡があったかどうかを考察したが、周辺国やメディアの一部が石油を用いてアメリカに圧力をかかるべきだという圧力があったものの、両国は信頼される石油供給者としての地位を維持することを第一に考え、そうした圧力には応じなかったことを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の柱になる三つの時期についての研究が相当進んできており、特に上述の1に関する論文は査読付き雑誌への掲載が決定している。また、平成24年4月-7月にかけて実施したサウディアラビアにおける調査、そして平成25年3月に実施したサウディアラビアとクウェートにおける調査を通じて平成25年度に発表予定の2、3の時期の議論の根拠になる資料やインタビューを多く集められたため。
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今後の研究の推進方策 |
既に資料がほぼ集まった上述の2と3の研究を学術雑誌と学会の双方で発表する。それが終わり次第、1、2、3の時期を理解する上での助けになる間の時期(1950年代-1960年代および1980年代-1990年代)について、サウディアラビアとクウェートの石油政策に焦点を置きつつ概括的な議論を行う。これらに必要なアラビア語文献や資料、インタビューの収集のためにサウディアラビア、クウェートに、そして英文の外交資料の収集のためにアメリカ、イギリスでの調査も予定している。
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