研究概要 |
平成25年度は, 前年度に台車型倒立振子を用いた制御実験を通して有効性を検証した静的非因果的周期時変スケーリングに基づくロバスト制御器設計法をさらに実用的なものへ昇華するため, 積分補償を活用することを検討した. そのような議論における難しさは, 主に本研究で扱う制御器がリフティングを介して設計されることにより, 自然な形で周期時変なものとして導出されることに起因する. 周期時変な制御器は時不変なものよりクラスが広いため, よりよいものが得られやすい利点があるが, 積分補償の導入の仕方によっては制御系の応答の収束が保証できなくなるなどの問題が生じうる。本研究ではそのような問題が生じない方法を提案し, その有効性を昨年度に引き続き台車型倒立振子による実験を通して検証した. また, 本年度は前年度に精力的に理論基盤の整備に取り組んだ動的な非因果的周期時変スケーリングについて, ロバスト制御器設計へ活用することが可能かどうかの基礎的な検討を行った. スケーリングの能力の観点からは, 静的なものよりも動的なものの方が一般に優れているが, 後者を設計に応用することは前者を用いる場合に比べてハードルが高く, これまでその見通しが立っていなかった. この問題に関して, 近年海外の研究者が関連する成果の発表を行い, 多少問題の設定が異なるものの, 我々が扱う問題に関しても基本的には同様の議論が展開できることを本年度に確認することができた. 同内容に関して今後さらに研究が進めば, 非因果的周期時変スケーリングをさらに柔軟に運用することが可能になるものと期待される.
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