研究課題
『複雑な新奇形態がどのように進化するのか』という問題は、進化学上の未解決課題である。特に、食虫植物が形成する袋状の捕虫葉の進化は、元々平面的構造を持っていた葉が立体的に変化した点において、革新的な形態進化の例である。しかし、こうした立体的構造がどのような遺伝的変化によって生じたのかという点は明らかになっていない。本課題では、捕虫葉の形態進化を引き起こした遺伝的変化を特定することを目的とする。当初、ムラサキヘイシソウの捕虫葉発生初期において捕虫葉特異的なPHABULOSA、F ILAMENTOUS FLOWERの発現様式を示すステージがあると予想して研究を進めたが、そのような結果は得られなかった。細胞分裂様式の解析を行ったところ、上記の遺伝子発現ドメインが標準的に成立したのち、表側組織の細胞分裂方向が捕虫葉特異的に制御されることによって袋状の形態が形成されることがわかり、論文作成を開始した。環境条件に応じて普通葉と袋型捕虫葉を個体内で作り分けるフクロユキノシタを用いて、ウイルス誘導性遺伝子抑制法による130転写因子の遺伝子抑制スクリーニングを開始した。これまでに捕虫葉形態に異常を生じる遺伝子を複数同定している。例として、普通葉の発生制御因子として知られるASYMMETRICLEAVES2遺伝子を抑制すると、捕虫葉が剣状葉と呼ばれる全く異なる形態の葉に転換された。この結果は、捕虫葉が普通葉型と剣状葉型の発生様式の組み合わせによって成り立っている可能性を示唆している。
2: おおむね順調に進展している
ムラサキヘイシソウにおいて捕虫葉形態形成の鍵となる細胞分裂様式を同定できた。また、フクロユキノシタのノックダウンスクリーニングにおいては、期待通り捕虫葉形態に異常を生じる遺伝子が複数同定できた。
前年度までに、ムラサキヘイシソウで得られた捕虫葉の発生様式に関するデータをまとめ、論文作成を開始した。H26年度中に論文を完成させ、発表する。前年度から、フクロユキノシタにおける遺伝子抑制スクリーニングを進行中であり、本年度前半に候補遺伝子130個のスクリーニングを完了する予定である。その後、得られた候補遺伝子の捕虫葉発生における役割を明らかにし、論文としてまとめる。また、フクロユキノシタのゲノム解読の結果をまとめ、H26年度中に発表する。
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Genesis
巻: 52 ページ: 1-18
10.1002/dvg.22728