研究概要 |
昨年度に引き続き、PETの水蒸気分解における熱分解と加水分解の影響をより詳細に検討するため、PETと同じポリエステルであり主鎖構造の異なるポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリエチレンナフタレート(PEN)について、^<18>O同位体標識水を用いた熱分解と加水分解の識別手法(Kumagaietal., et al., Chem. Lett., 42, 212, (2013))を適用し、水蒸気分解における分子構造の違いについて検討した。その結果、アルキル鎖の長いPBTはPETに比べ低い温度で水蒸気分解する上、アルキル鎖が長いため、熱分解で生成したビニル基末端のアルキル基が更に加水分解可能である事から、加水分解割合が高い事が明らかとなった。また、いずれの樹脂においても、分解に伴い加水分解割合が増加する傾向が確認された。 続いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)からのベンゼン回収に関する検討を行った。金属含有PETと水酸化カルシウム(Ca(OH)_2)(水酸化カルシウムが脱水する際に生成する水蒸気を加水分解に利用)を混合した際の、ベンゼン生成に及ぼす含有金属の影響を調査した。その結果、昨年度の報告と同様に、触媒を混合した場合においても、含有金属のベンゼン回収に及ぼすネガティブな影響が無い事を明らかにした。 また、金属水酸化物として、Mg(OH)_2、Ba(OH)_2およびAl(OH)_3を触媒として使用し、ベンゼン収率・純度に対する評価を行った。その結果、A1(OH)_3についてはほとんどベンゼン生成に寄与せず、それ以外のアルカリ土類金属の場合、塩基性度の序列に従いベンゼン収率・純度が向上する事が明らかとなった。
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