研究概要 |
生殖免疫学的に解析を行い、生殖戦略の解明、不妊治療への一助を目指し研究を進めるにつれ、妊娠中におけるオートファジーの重要性を見出した。胎盤は短期間のうちに増殖、分化するにもかかわらず、各ステージにおいて適切なサイズ、適切な形態を維持している。これらの機構にオートファジーが関与しているのではないかと我々は推測した。また、細胞がオートファジーを起こす際に形成するMAPILC3について、ヒトではA, B, Cの3つのサブタイプが知られており、これらについても異なる組織、異なる経路によって引き起こされるオートファジーの違いを示していると考えた。従って我々は正常胎盤、絶食によりオートファジーを誘導した胎盤について、どのような違いが起こるのかを明らかにするべく実験を行った。 妊娠適齢期のICRマウスを交配させ、プラグ確認日をD1とした時のD12,14,16の各日齢に置いて胎盤を採材した。一部をパラフィン包埋後4umの切片を作成し抗p53、P70S6K, MAPILC3A, B, C、カスパーゼ3抗体を用いて免疫組織化学染色を、また、各日齢の胎盤組織を迷路部、脱落膜部、間膜腺部の3っに分離し蛋白、mRNAを抽出し上記の抗体を用いてwestern blotting、p53、オートファジーに関連した因子に対するリアルタイムRTPCRを行った。一方で、同様にマウスを交配させたものを採材二日前に絶食状態にしたマウスを作成し、これらも上記と同様に採材し実験を行った。western blottingの結果より、MAPILC3A, B, Cそれぞれにおいて異なった発現様式を明らかにすることが出来た。この結果はLC3A, B, Cがそれぞれ異なるオートファジーを検出していることを示唆する。免疫染色により各細胞でもABCの染色形態が異なることもこの結果を支持している。絶食群においても正常とは異なる発現量の変化を示した。
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