研究課題
本研究では、数値化や記述が困難な人間の感性情報を、人間とコンピュータとの対話を通して明らかにし、意思決定やデザイン設計に応用することを研究目的とする。E-co㎜erceなどに見られる従来の情報推薦はアクセス履歴などに基づくコンテンツ同士の関連度から呈示を行うものである。これに対し、本研究では個人ごとに、そして対象問題ごとに異なる感性モデルから共通するモデル、普遍的なコンセプトと言えるメタモデルを抽出し、応用した新しい推薦技術の確立を目指していることに意義が存在する。これらのモデル抽出を可能とする手法として、対話型遺伝的アルゴリズムに着目している。ユーザの評価と最適化計算を繰り返すことで、ユーザの感性モデルを特徴空間中の景観(ランドスケープ)の形状によって表現する。この対話型遺伝的アルゴリズムを用い、感性のメタモデルを抽出するために、以下の問題を解決していく必要がある。(A)複雑な感性モデルの推定、(B)ユーザの評価の揺らぎの検討、(C)メタモデルの抽出技術の検討である。課題(A)については採用第一年度に、多峰性の感性モデルにおいて複数の最適化を求めるアルゴリズムを開発した。採用第二年度目である本年度は、課題(B)について取り組んだ。対話型最適化手法では、ユーザの主観的な評価値を用いてランドスケープの探索を進めるため、ユーザの評価に揺らぎが生じるとその感性モデルを正しく抽出できなくなる。そこで、ユーザの評価の揺らぎについて検証し、さらにより正確な評価値を得るための一手法として脳活動情報に着目した。ユーザの解候補を評価するときの脳活動を計測し、感性的な評価値との関係を定量化することで、脳活動情報による評価値の算出や補正を行うことを試みた。本研究ではこのためにMRI装置を用いた生体情報の取得と利用について数回の被験者実験を行っている。さらに年度の後半には非常に精度の高いMRI装置を借用し、大規模な被験者実験を行ってユーザの脳活動と嗜好との関連性について調査を進めた。これらの研究の成果については適切な機会に研究発表を行い、外部に公開している。
2: おおむね順調に進展している
研究目的である対話型最適化を用いた感性情報のメタモデルの抽出と応用に対し、本年度は感性情報に基づく評価の揺らぎを脳活動から調査を行った。ユーザが評価する際の脳の活動について緻密な計測を行って調査を進めることで、評価の際の認知活動の特徴や脳活動からの評価値の算出や補正を行い、より正確な感性情報のモデル化について検討した。これらの成果は適切な機会にその研究成果を学会などで発表しており、研究は実施計画通りに順調に進んでいると言える。
今後の研究については、脳活動情報によるユーザの評価の揺れに関する検討をさらに進める。評価値の補正手法について詳細な検証と技術の確立を行った後、正確な感性モデルの推定を行う検証実験を行う。そして脳活動情報処理において得た信号処理の知見も合わせて感性のメタモデルの抽出を行い、被験者を伴う実験によって改良を行った後、それらの結果をとりまとめて論文、研究発表などの形式で外部に公表する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)
International Journal on Computer Science and Enegineering (IJCSE)
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理工学研究報告書
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Applied Computational Intelligence and Soft Computing
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10.1155/2013/302573