研究課題
本研究では、光誘起機能性分子の電子・スピンダイナミクスのメカニズム解明のための非経験的理論計算手法を開発することを目的としている。特に、ダイナミクス計算のコストの問題を解決することは重要である。この目的のため今年度は、昨年度に引き続き、3項間漸化式に基づく効率的な時間発展法の開発を進めた。実装した3項間漸化式法のプログラムの整備や、吸収ポテンシャルを含む計算への拡張を進めるとともに、3項間漸化式法の時間の変換について研究した。3項間漸化式法は、核波束ダイナミクスの効率的時間発展法である実核波束発展法を参考に開発したが、演算子変換に逆余弦関数ではなく逆正弦関数を用いるという点で異なる。この演算子変換により演算子の固有値であるエネルギーも変換されるが、逆変換により元のエネルギーが得られる。また、エネルギーの変換に対応して時間も変換されると考えられる。先行研究の実核波束発展法では近似的な時間変換の式が導出されているが、時間の変換がエネルギーに依存するため、系が様々なエネルギーをとる場合、直接的な時間発展の記述には適さなかった。そこで、本研究では3項間漸化式法における時間の変換を、演算子変換に伴うエネルギー変換の観点から考察した。3項間漸化式法におけるエネルギーは、演算子と同様に逆正弦関数を用いて変換されており、エネルギーが大きくない場合にはほぼ線形の変換となる。この場合、a倍のエネルギーを持つ状態の振動周期は1/a倍になるという関係から、時間の変換もほぼ線形であると考えられる。これに基づいてエネルギーに依存しない近似的な時間変換の式を提案し、3項間漸化式で得られた時間発展を逆変換して元の時間軸上での時間発展を得た。この結果は、従来の時間発展法による結果をよく再現した。このように、3項間漸化式は時間発展の記述にも適していることを明らかにし、効率的な時間発展法であることを示した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
The Journal of Computational Chemistry, Japan
巻: 13 ページ: 184-186
10.2477/jccj.2014-0024