研究実績の概要 |
生体内の様々な化学反応は、多くの場合、活性中心に金属を含む酵素によって触媒されている。酵素は酸化還元反応、光合成など現代科学がターゲットにしている化学反応を温和な条件下で高選択的に行っている。また、酵素は高い基質特異性を持っているので、ミューテーションや金属の置換によって触媒する分子を制御する研究が盛んに行われている。しかし、酵素反応は非常に短命な中間体を含んでおり、反応経路の予測や活性中心近傍に存在する金属イオン、アミノ酸残基の機能の解析が難しいことも多く、酵素の改変を行うための知見は多くない。一方、理論計算はこの不安定な中間体の予測、金属イオンやアミノ酸残基の役割を予測する上で大きな力を発揮しており、人工酵素の作成を行う上でも理論計算による反応機構の解析は非常に有用であると考える。本研究では理論計算による変異酵素の反応制御と設計について研究を行い、効率的な変異酵素を予見する。 研究対象はジオールデヒドラターゼによる1,2-プロパンジオールの脱水反応である。活性中心に存在するアミノ酸残基の機能を計算ミューテーションを用いることで明らかにした。また、計算ミューテーションにより計算された変異型の野生型に対する相対活性は実験値と計算値で非常によく一致した。このことは計算ミューテーションを用いることで変異型酵素の活性を予測できると期待できる。この結果に関する論文は現在投稿中である。この研究成果に関して国内外の学会で発表を行い、高い評価を得ている。
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