研究課題/領域番号 |
12J05119
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山内 卓樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | イネ科植物 / 耐湿性 / 通気組織形成 / 活性酸素種 / レーザーマイクロダイセクション |
研究概要 |
イネとトウモロコシにおいて誘導的通気組織形成過程において共通して発現が誘導される転写因子EREBP遺伝子の過剰発現用ベクターを作出した。イネについては、形質転換によってイネEREBP過剰発現体を作出した。トウモロコシについては、転写因子EREBP過剰発現用ベクターを共同研究者に提供し、現在形質転換体の作出を進めている。 受け入れ研究室がもつ植物の各組織を切り分けて単離する技術であるレーザーマイクロダイセクション装置を利用して、イネの根の各組織からRNAの抽出を行った。得られたRNAサンプルを用いて、活性酸素種の除去を担うMetallothionein(MT)タンパク質をコードする遺伝子MTの発現解析を行った結果、MT遺伝子は根の中で誘導的通気組織が形成される皮層組織において特異的に発現抑制されることがわかった。この結果から、皮層組織では活性酸素種の除去機能が低下することで、活性酸素種の蓄積が促進されることが示唆された。また、細胞の崩壊過程において細胞壁を分解する機能をもつ酵素遺伝子が誘導的通気組織形成過程の皮層組織で特異的に発現誘導されることも明らかにした。 活性酸素種の除去を担うタンパク質であるMTによる活性酸素種蓄積の制御と通気組織の形成メカニズムを明らかにするために、イネにおいてMTおよびMT-Antの過剰発現体を作出した。 蛍光タンパク質の観察によって細胞レベルの発現制御を解析するため、MTのプロモーターに赤色蛍光タンパク質RFPを連結したベクター、MT-Antおよび細胞壁の分解を担う酵素遺伝子のプロモーターに緑色蛍光タンパク質GFPを連結したベクター、さらに活性酸素種に反応して黄色蛍光を放つタンパク質Hyperを過剰発現させるベクターの構築し、イネにおいて形質転換体の作出を行った。形質転換を行った当代について、形質転換後の選抜を経て再分化した植物体の中から生育が進んだ個体を用いて随時顕微鏡下での蛍光タンパク質の発現の観察を開始するために、蛍光顕微鏡の利用方法を習得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画に基づいて研究を滞りなく進めており、本研究課題に関連して得られた成果を学会発表や論文発表によって積極的に紹介しているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に沿って順調に研究は進めているが、最終的な研究成果の発表を想定した場合、より迅速な研究の推進が必要である。本研究では、蛍光タンパク質を用いた細胞レベルの発現解析を計画している。その中で、活性酸素種の除去を担うMTタンパク質と通気組織形成に関わる酵素遺伝子を同時に蛍光顕微鏡下で観察するために、独立に得られた2つの形質転換体を交配することを当初想定していたが、今後は2つの蛍光タンパク質発現用ベクターを一度の形質転換でイネに導入することに試みる予定である。また、MTタンパク質の機能と密接に関連する活性酸素種の発生を担うタンパク質についても同様に解析を進めていくことを計画している。
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