研究課題
植物体内に形成される気体の通り道である通気組織は、耐湿性に関わる重要な形質であり、土壌中の酸素濃度が低下した低酸素状態において、地上部から根端部への酸素供給に寄与している。このことから、農業上重要な穀物を多く含むイネ科作物において、通気組織形成メカニズムを解明することが期待されている。イネの根の通気組織は好気的環境において根の成長に伴い形成される恒常的通気組織と過湿環境に応答して形成される誘導的通気組織に分類される。本年度は、誘導的通気組織形成過程において活性酸素種の発生を担う酵素であるrespiratory burst oxidase homolog (RBOH) をコードする遺伝子のAntisense鎖を発現させた形質転換体を作出し、一部の系統においてRBOH遺伝子の発現抑制がみられることを明らかにした。また、カルシウムを除いた生育条件(低酸素条件)においてイネの根の誘導的通気組織形成が抑制されることを明らかにし、RBOHの活性がcalcium dependent protein kinase(CDPK)によって活性化される可能性を見出した。さらに、イネの根の誘導的通気組織形成過程に特異的に発現誘導されるCDPK遺伝子を同定した。一方、イネなどの耐湿性の高いイネ科植物にしかみられない恒常的通気組織形成は過湿環境への適応において非常に重要である。本年度は、オーキシンシグナル伝達に異常のみられるイネの変異体の根では好気的な条件においても通気組織形成能の低下がみられることを示した。このことから、植物ホルモンのオーキシンが恒常的通気組織形成に関わることが示唆された。今後、恒常的通気組織形成の分子機構をさらに詳細に明らかにし、イネ科畑作物の根に恒常的通気組織形成能を賦与することができれば、将来的にはイネ科畑作物の耐湿性の向上に貢献すると期待している。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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