研究課題/領域番号 |
12J05127
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 早紀子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 里内裏 / 平安宮内裏 / 装束 / 貴族社会 / 摂関期 / 院政前期 / 公家故実 |
研究概要 |
本研究の目的は、装束を中心とする公家故実について、バラエティ豊かな史資料をもとに政治史・制度史的分析を行い、変遷する歴史の中に組み込んでその史的意義を解明することである。当該年度は、院政前期の貴族装束について、特定の装束が着用される場面の特徴と、そこに表れている政治的・社会的意味を考察した。特に重要な問題であったのは「装束が着用される空間」である。院政前期の貴族社会において、里内裏と平安宮内裏がどのような位置付けにあるのかを明らかにすることが必要となった。 当該年度の研究成果の具体的内容は、従来の研究では、院政前期の平安宮内裏は天皇が居住しなくなり、王宮としての機能・権威を低下させたと評価されていた。この評価に対し、摂関期から院政前期までの平安宮内裏と里内裏について、史料に基づき様々な視点から検証した結果、平安宮内裏は天皇の在・不在に左右されず、天皇の「御本所」として認められるようになったのであり、これは新たな権威の獲得であると評価できる、という独自の見解を提示した。8月に新潟県で開催された古代史サマーセミナーで報告を行い、報告後の質疑応答で指摘された課題をさらに検討し、論文にまとめた。論文は学術雑誌への投稿の準備を進めている。 当該年度の研究の意義・重要性は、従来の研究では十分に進められて来なかった、里内裏の史的意義についての考察を行い、独自の見解を示したことである。貴族装束に関して、どの場面でどの装束を着用するかということが問題になる時、多くの場合に先例や故実が参照されるが、それらはもともと法による規制ではなく、様々な貴族の個人的な主義・主張が蓄積したものという側面がある。それならば、当該期の平安宮内裏・里内裏についての貴族たちの考え方を明らかにすることは、今後貴族装束についての検討を進めていく上で不可欠であり、基盤となる研究であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公家故実、特に貴族装束の研究は着実に進展しているが、その研究成果は、論文にまとめ学術雑誌に掲載されることで一応の完成をみるものであると考え、その作業が進行中であるため(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
奈良時代から平安時代にかけて、貴族装束がいかにして成立したかを研究する。この研究と、院政前期の貴族装束についての研究をまとめ、古代から中世にかけての、貴族装束の変化の過程とその意義を明らかにする。
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