研究課題/領域番号 |
12J05130
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 芽意 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 蛍光 / モニター / Photosensitization reaction |
研究概要 |
Photosensitization reaction (PR)による不整脈治療に運用可能な経カテーテル的光学モニターとして、心筋組織のネクローシス深度を推定する治療深度モニターと、診断モニターとして光過敏症の発症リスクを評価する皮膚内残留薬剤モニターに関して研究を行った。 治療深度モニターに関しては、昨年度までに光感受性薬剤由来蛍光計測に基づいて定義した指標により組織傷害深度を推定可能であることが明らかになったが、モニターの精度や精度に影響を与える要因に関して検討が不足していた。本年度の検討により、治療深度モニターはmm精度の深度推定性能を有することが明らかになった。治療深度モニターの精度に影響を与える要因の一つとして、レーザカテーテルの接触圧力に注目した。カテーテルの接触圧力が大きくなると、経カテーテル的に受光する蛍光強度が減少する傾向が得られ、心筋圧排に伴う血流量の低下や光感受性薬剤の排除が原因であると考えられた。カテーテル接触圧力によって治療深度および推定治療深度が影響を受ける可能性が高いことから、モニター運用時に補正する方法を検討する必要性が明らかになった。 皮膚内残留薬剤モニターは、PRによる治療後に皮膚内に残留する光感受性薬剤によって生じる光過敏症の発症リスクを事前に評価するものであり、安全かつ早期の退院を支援することに意義がある。PRによる不整脈治療のみならず呼吸器癌、悪性脳腫瘍に対する治療においても利用可能であるため、臨床における重要性は高いと考える。本モニターは経皮的に皮膚内に残留する光感受性薬剤由来蛍光を分光し解析することによって相対的な光感受性薬剤濃度を推定する構想であり、本年度はモニター装置の開発、解析方法の検討、大型動物を用いた実証実験を行った。In vivo大型動物実験により、試作したモニター装置によって薬剤投与後経過時間に伴って代謝される薬剤の時間推移を推定可能であり診断モニターとして利用可能であることが明らかになった。来年度より、臨床研究を開始できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は経カテーテル的な光学モニターとして(1)診断モニター、(2)治療モニター、(3)装置モニターを開発することにある。本年度は(2)治療モニターとして心筋組織傷害深度を推定するモニターの検討を進め臨床研究用装置に搭載し生体内での運用可能性を確認した。また(1)診断モニターとして光過敏症のリスクマネジメントを目的とした皮膚内残留薬剤モニターの開発を行い、in vivo動物実験によりその利用可能性を確認するとともに来年度より臨床研究を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚内残留薬剤モニターの臨床研究を行う。取得したデータを解析し、PRによる術前術後の皮膚内薬剤濃度推移を比較するとともに、医師の問診に基づいて術後の皮膚状態や光過敏症の発症有無やその程度との関連を調査する。臨床における光過敏症発症リスクのマネジメントする方法およびプロトコルを検討し、医療装置としての臨床応用を目指す。一方で、皮膚内残留薬剤モニターによる薬剤濃度推定の定量化を目指し、溶液実験にて試作したモニター装置による蛍光計測結果と薬剤濃度との関連を調査する。また、一昨年度検討を行った、血液焦げ付き防止モニターに関して、焦げ付き発生までの血液光学特性変化に伴う経カテーテル的戻り光強度の変化を光線追跡シミュレーションにより計算し、両事象の関係性およびその妥当性を検証する。
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