①昨年度、ニホンザル血小板減少症の原因ウイルスがサルレトロウイルス4型(SRV4>であることを同定した。SRV4はカニクイザルに対しては低病原性であるとされている。現在のところ、SRV4の種間での病原性の違いの原因は不明である。そこで、本年度はレトロウイルス抑制因子(APOBEC3及びTetherin)に着目し、カニクイザル及びニホンザルのレトロウイルス抑制因子のSRV4に対する機能を解析した。結果的にニホンザル及びカニクイザルのAPOBEC及びtetherinは濃度依存的にSRV4を抑制した。また、APOBECはSRV4粒子内に取り込まれていることがわかった。invitroではニホンザル及びカニクイザル問でのAPOBEC及びtetherinの機能に差は見られなかった。このことから、両種間でのSRV4の病態の違いはこれらが原因ではない可能性があるが、今後個体レベルでの比較を行うことも重要であると考えられる。また、APOBECやtetharin以外の因子が病態において重要である可能性もある。 ②ヒト以外の霊長類は独自のフォーミーウイルス(FV)を保有しており、そのFVは宿主と共進化していることがわかっている。昨年度、私はニホンザル(鳥取)が保有するFVの全長配列を決定した。本年度では新たに鳥取出身1頭、嵐山出身2頭及び屋久島出身5頭のFVの一部の配列を決定した。決定した配列を元に系統樹を作成したところ、ニホンザルは少なくとも3系統のWを保有していることがわかった。また、同じ出身の個体由来のものは同一クラスターを形成するが、異なる出身由来のFVは異なるクラスターを形成した。よって、ニホンザルは生息地毎に異なるFVを保有していると考えられ、これを利用することでニホンザルがどのよに日本国内での進化を解析できる可能性がある。
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