研究課題/領域番号 |
12J05186
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
桐田 敬介 上智大学, 総合人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 造形遊び / 美術教育学 / 教科教育学 / 質的研究 / 実践知 |
研究概要 |
研究(1)における授業者の「学びの物語」の研究において、「教師は造形遊びの授業における子どものどのような様相について物語っているか」を明らかにするために、研究協力者である教師の授業を質的研究の枠組みにおいて分析した結果を、第35回美術科教育学会島根大会にて発表した。 まず、授業者の行った造形遊び単元として構想・実施された「ビー玉の道」という授業の1時間47分の映像データから児童の「行為」「発言」、それらの相互作用における「雰囲気」に焦点を当てた文字起こしを行い、全120枚のテクストデータにまとめた。次に、テクストデータに基づきつつ、適宜映像データを参照しながら、児童生徒個々人の造形活動のプロセスを追跡することに留意し、M-GTAの枠組みを用いて概念・カテゴリーを生成した。その結果、【「ビー玉の道」における造形活動プロセスモデル】が構築された。このモデルによって、児童が造形遊びの授業において予想外の問題状況につまずき、それら諸問題を解決するために協同的に試行錯誤することで、即興的な問題解決を行っていること、そして教師はそれら個々の問題解決のプロセスを解釈しながら個別的に指導していることが明らかとなった。これらのことから、【教師は児童の即興的な問題解決プロセスを「物語」として語ることによって、ひとりひとりの子どもたちの学習過程を解釈し評価しているのではないか】という仮説が生成された。以降は、この質的研究を論文化し、上記の仮説を検証する量的研究を実施していく予定である。 また、研究(2)における授業者の実践報告のテクスト分析と、研究(3)における授業者の実践知を継承するワークショップの構築のために、すべての教員が則るべき学習指導要領に記載されている教科目標と教科内容の意味内容を明らかにする理論研究を二件行った。第一に「感性を働かせながら」という文言についての理論研究を行い、この研究は第61回日本美術教育学会愛知大会にて発表し、美術科教育学会『美術教育学:美術科教育学会誌』第35号に掲載された。第二に、ハーバート・リード『芸術による教育』が提起している教育原理を現象学的アプローチによって再解釈し、『上智教育学研究」第26号に掲載された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究(1)の授業者の「学びの物語」を裏付ける授業の具体の様相を質的研究の方法論から分析することによって、今後の授業者の実践知分析とその継承に対する重要な仮説が得られたため。また、研究(2)・研究(3)へと接続するための理論研究も二件行うことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も授業者のインタビューと参与観察を行うことによって、造形遊びの実践知分析を進めていく予定である。 また、今年度は授業者の造形遊びにおいて掲げている「目的」に関するテクスト分析を行うため、資料収集を行い質的調査の方法論を用いて分析していく予定である。
|