1.知覚基盤評価の高次化:前年度に引き続き,表情静止画,表情動画が視線運動へ及ぼす影響を分析した。(1)初年度より継続してきた表情静止画に対する視線運動の評価研究の参加者数を増やし,生活・発達年齢,自閉症重症度との相関関係を再分析した。自閉症児と定型発達児の違いはない一方,怒り表情に対する注視時間は自閉症重症度と負の相関関係にあり,初年度から一貫した結果が認められた。(2)新たに開発した,表情動画を用いた実験プログラムの妥当性を調べるため,定型発達成人を対象に,視線運動に対する笑顔の報酬としての機能の分析を行った。その結果,怒り表情に比べ,喜び表情において,視線運動がより強化されたことが示された。 2.支援指導の継続と結果分析:社会的文脈と表情との対応関係が未成立である自閉症スペクトラム障害児2名に対し,コンピュータ教材を用いた支援を実施した。その結果,発達年齢2歳の自閉症スペクトラム障害児であっても,社会的文脈と表情の対応関係を支援によって獲得できることを示した。(2)表情-表情間,及び声のリズム-表情間の対応関係の成立/未成立が,自閉症児と定型発達児の間でどのように異なるかを調べた。その結果,表情-表情間の対応関係は自閉症児・定型発達児共に成立していることが多かった一方,声のリズム-表情間の対応関係が,自閉症児群では成立しづらいことが示された。3)昨年度から開始した病院小児科との連携を発展させ,病院内での支援プログラム運用を継続実施した。その結果,病院内での支援により,2~3歳の自閉症スペクトラム障害児3名において,アイコンタクト及び笑顔表出の生起頻度が増加したことを示した。 3.コンピュータ支援プログラムのタブレット型端末への実装:これまでの研究成果から作成されたコンピュータ支援プログラムの汎用性を高めるため,タブレット端末でも使用できるアプリケーションの開発を進めた。
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