研究課題/領域番号 |
12J05204
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
郭 薇 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 法意識 / 法情報 / 法律メディア / 立法過程 / 法律雑誌 / 刑事法改正 / 立法報道 / 法知識 |
研究概要 |
「研究の目的」 本年度は、まず法言説に関する理論の構築を行い、法情報をめぐる伝達メカニズムを模索すること、また「法律雑誌の発信活動」または「法報道のあり方」2つの側面から、刑事法改正における情報の実態を確認すること、その2つの柱の下で研究を進んだ 「研究の実施状況」 まず、『感情立法』の現象解明を目的とした理論的な検討において、刑事法の立法動向を整理しながら、法制度をめぐる世論性質の変化を検討した(2012年3月第9回東アジア法哲学会の報告)。さらに、問題の理論枠組を検討し、「リアリティーとしての法-『感情立法』に向けての一試論」博士事前審査論文では、立法における異なる主体(例えば被害者の言説)から法解釈モデルの拡大を検討した。 また、事例研究では、日本における立法報道の変化、法律書籍の商業活動など多面的に法情報の歴史を探ってきた。東京大学明治新聞雑誌文庫または日本評論社を訪問し、インタビュー調査など行い、法をめぐる情報の発信は、(1)一般発信として新聞の報道は、法案(草案)における政策の効果原理より「政治の中の法」という独自の法律像を形成させること、(2)法律情報誌は編集活動また読者のネットワークの構造自体がより法学の専門性を追求する傾向が強まり、一般発信のメディアとの連携が弱くなっていくことがわかる。以上のような成果をまとめ、2013年第3回東アジア法社会学会議では研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「感情立法」の機能と意味を明らかにするために、public sphere.世論、法的コミュニケーション、法の象徴機能、法意識などに関する最新の理論動向を有機的に組み合わせて、研究者独自の理論枠組みの構築を行い2篇の論文として公表した。さらに実証研究として、史料調査とインタビュー調査を併用し、法律雑誌(『法律時報』)やマスメディア(とりわけ新聞)による法情報発信と公論形成の関係について、オリジナルな知見を獲得した。これらの研究成果は2013年3月に上海交通大学で開催された東アジア法社会学会において個別報告として示され、日本の学界のみではなく東アジア法社会学研究領域にも発信できたよう思われる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)文献研究本研究の対象事例である「公訴時効制度の改正」の報道は、刑事法改正の文脈の上で展開すると思われる。今後は、戦後の立法報道を検討する際に、刑事法改正に関する一般の情報変化も視野に入れる必要があると思われる。また、昨年の研究では報道機関におけるテキストの作成・編集活動の独立性が検証され、今年度は被害者団体の活動記録と言説を収集しつつ、報道情報と立法情報の比較を行う。 (2)実証研究被害者団体のメンバーや関係者と接触し、インタビューを中心手法にして、フィールドワークを行う。従って、被害者団体の活動における公訴時効の捉え方を把握、解明する作業を行う。昨年に続き中国南京大学の犯罪予防センターに訪ね、中国における被害者と法改正との連動を調査する。
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